蹴りたいおケツ
移動中ランニングダイエット中のこと。昼時の都会の歩道。人が多くてなかなか前へ進めない。まったくチンタラ歩きやがって。昼食に向かうのか弁当を買いに行くのか、OLの軍団が前を歩いていた。つい、ケツを見てしまう。無防備なケツを蹴りたい。(参考:『蹴りたい背中』綿谷りさ)『蹴りたいおケツ』なんてくだらないことを考えながら、絶妙なフットワークで追い抜かそうとした。軽いステップのつもりだったが、実際はじじいのステップだったらしい。右足首がクニャ。バランスを崩した俺は派手にこけて、OLの『蹴りたいおケツ』に激突。うれしい、いや、うれしくない。イタっ。ギャーー、とケツ。「あ、すいません。」と軽くあやまってみた。OL軍団は予想に反して優しかった。ひとりのケツが「だ、大丈夫ですか?」と、まるで俺が大怪我をしたかのように。他のケツも同様に心配であるという意が伝わってくる内容の声をかけてくれた。本当にありがとう。俺が悪いのに。ケツ扱いしてごめんなさい。でも、これ以上関わらないで、心配しないで、恥ずかしいから。「ぜんっぜん大丈夫です」と言って俺は立ち上がった。もっと違う形で君たちと知り合いたかった。こんな形で出会った以上、俺はもう行かなければならない。周りを見ずに、とにかく移動中ランニングダイエットを続けるべく走り出した。いや逃げ出した。これほどまでに派手にこけたのはいつ以来だろうか。もはや記憶がない。それほどの見事なこけだった。じっと手を見る。(参考:石川啄木)すりむいている。いてーー。