テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:カナダ
ボストンのサウスステーション駅でニューヨークまでのチケットを買い、
私とナオコさんはコーヒーを飲みながら電車が来るのを待っていた。 「課題、大丈夫ですか?」 「うん、大丈夫。まだ残っているけど、向こうに持っていくから。 私は叔母の家に泊めてもらって昼間は課題、頑張るわ。 だから、またほとんど一人で観光してもらう事になるけど、ごめんね。」 「とんでもない!こちらこそ、全部手配してもらってすみません」 ニューヨークにはナオコさんの叔母さんがいて、 その人が私のために今回のニューヨーク滞在のホテルから、 帰りの飛行機の手配まで全部してくれた。 ナオコさんには悪いけど、 実はニューヨーク一人旅、を今回の旅の集大成にしようと思っていた私は、 ナオコさんとの二人旅になる、と思って少しがっかりしていたので、 ホテル宿泊も、歩き回るのも一人で出来る、と知ってワクワクしていた。 アムトラックの一番安いコーチ席に私とナオコさんは向かい合わせに座って ナオコさんの叔母さんの話をした。 ワールド・トレードセンタービルで働く彼女は独身。 多分今までに色々あったんだろうけど、 とにかくものすごく素敵な人で、ナオコさんの憧れの人だという。 会えるのが楽しみだ。 そうこうしているうちにナオコさんはすぐに眠り始めたが、 私は窓の外の景色を見るのが大好きなので、飽きずにずーっと見ていた。 途中海が見え、その海の見える街で日常生活を送っている人々の姿が見える度に 「今、ここで電車を降りたい」という衝動に駆られる。 もしそれが出来たら、もしかしたらそこに私の居場所があって、 そこに私の別の人生があるかもしれない。 そんな事を考えるのが私はとても好きだ。 外が暗くなって、アムトラックはマンハッタンのペンシルバニア駅に到着した。 降りた途端、そこは夕方のラッシュアワーでごった返していた。 バンクーバーもボストンも、とてもゆったりと時間が流れていたので、 マンハッタンの人々の早送りのような足の動きに付いて行けず、 おまけにバカでかいスーツケースをのろのろと引きずり、私は人の流れをせき止めていた。 何とかかんとか外に出ると、そこはテレビでいつか観た、あのニューヨークだった。 お上りさんのように首を90度に曲げ、上を見上げる私に、ナオコさんは 「そんな荷物を持ってる人、ここら辺じゃあまり居ないから気を付けて。 バスで行きたいとこだけど、スーツケースじゃキツイからタクシーね」 と言い、私の腕を引いた。 と、その時! 誰かが私のスーツケースをひったくるように持っていった! ガラガラガラ! 「あ!それ!ちょっと待って!」 サーッと血の気が引いた。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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