テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:カナダ
次の朝、ナオコさんと私は天気の良い街に飛び出した。
マンハッタンの移動の仕方をレクチャーしてくれるために、 初日だけナオコ先生が付いていてくれる。 まず、5thアベニューまで出てバスに乗る。 最初の目的地はワールドトレードセンタービルディング。 展望階に上がり、そこからマンハッタンを見下ろすと、 まるでマンハッタンがミニチュア模型のように見え、 このビルがアメリカだけじゃなく、世界中を見下ろしているように感じた。 何年か後に、このビルに飛行機が突っ込んで行く映像を目にした時、 これは、きっとあの時に私が行ったあのワールドトレードセンタービルじゃない、と そう思えて仕方が無かった。そう思いたかった。 自由の女神はワールドトレードセンタービルから見た。 間近で見たかったのだけど、 他にも沢山見たい所があったので時間的に余裕が無く、それは断念した。 でも、それで良かった気がする。 ワールドトレードセンタービルからの自由の女神。 それが私の中の自由の女神だ。 ワールドトレードセンタービルからウォールストリート周辺を歩くと、 私はある建物に目が釘付けになり、足が自然とそっちに向いた。 ナオコさんが「あ、あそこはトリニティ教会」と教えてくれた。 そこだけ時代が止まっている。 教会を取り囲んでそびえ立つビル群は、世界の流れを最先端で作り出しているというのに、 その教会だけはひっそりと、でもマイペースに自分だけの時を刻み続けているようだ。 お昼ご飯代わりにホットドッグを食べながら、 私たちはずっと歩き回っていた。 私は観光名所よりも、ただマンハッタンの日常を見ていたかった。 ナオコさんもきっと私と似たようなところがある人だと思う。 どうする?と聞かずに自然と一緒にそうしてくれた。 夕方近くになり、ナオコさんが言った。 「さて、やっぱりマンハッタンの夜景はあそこからでしょ」 地下鉄に乗ってミッドタウンへ。 地上に出ると、もうすでに周りは薄暗かった。 エンパイアステートビルディングの展望台に上がると、そこはものすごい寒さで、 私たちは鼻を真っ赤にしながら夕景から夜景に変わって行くマンハッタンを眺めていた。 悲しくて泣くことは必死で我慢する私だけど、感動するともう歯止めが利かない。 後から後から涙がこぼれてきて、ナオコさんが笑いながらティッシュを差し出す。 日本を出てから、私は本当によく泣く。 晩ごはんはナオコさんがご馳走してくれた。 マンハッタンに来たらいつもここ、と教えてくれた、韓国風焼肉屋さん。 「明日は一人で大丈夫?」 こんなに美味しそうに食べるナオコさんは初めて見るかもしれないな、と思いつつ、私は 「先生が良かったから大丈夫」 と答えた。 さぁ、明日はどこから始めようか。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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