カテゴリ:仕事
出勤初日から一週間後にスカウトであり、副社長のJは来日した。
ユダヤ系アメリカ人のJはマンハッタンのアパートメントに住む、元モデルだ。 年齢は40代半ばらしい。 初めてJに会った時、そのあまりの素敵さに緊張しすぎて声も出なかったほどだ。 私がカナダやアメリカにいた半年間にはお目にかかったことの無い人種、という感じだった。 少しだけ日本語が出来るJは「ハイ~、ワタシガJデスゥ、ヨロシクゥネェ~」 と笑顔で握手してくれ、それから社長と抱き合って再会を喜んでいた。 呆気にとられながらも私とマネージャーのユキちゃん、年齢不詳で英語堪能のカヨちゃんは Jに見とれていた。 ユキちゃんは英語の専門学校を出たばかり。ものすごく若い! とにかく英語を使って仕事したいんです!と張り切っている。 カヨちゃんは3ヶ月ほど前に長年いたシカゴから帰国したばかり。 「遊んで遊んで遊び尽くしてきた」と言っていたが、 留学してたのか、何してたのか教えてくれなかった。とにかく外人男性しか愛せないらしい。 Jを見る目も一番真剣だった。 そしてJがモデル達のカードを最終チェックし、OKが出ると、 いよいよ全員分のカードを各クライアントに郵送する作業が始まった。 これを見て仕事のイメージに合うモデルがいたら、クライアントから連絡が入る。らしい。 だから、カード作りとその発送はとても大事な仕事だ。 ただ、この事務所の場合、全く知名度が無い。 封筒にはもちろん社長とJの名前で挨拶文も入れてあるが、 2人のことを知ってくれているクライアントが一体何社あるんだろう。 そもそも、2人は何者だ? 封筒を糊付けして閉じていきながら、 私は社長とJが真剣に話し合っているのを横目でチラチラ見ていた。 2人の関係は…これまた怪しい…。 発送が終わると、社長はやっと私に仕事の流れを少しづつ教えてくれるようになった。 でも、モデルもまだ来日していないし、クライアントからの電話も全く無いので なかなか実際のブッカーの仕事を知ることは出来なかった。 でも、慣れるまではずっと社長がやってくれるんだし、横でお手伝いでもしながら覚えていこう。 で、無理そうなら、その時そう言って辞めればいいんだ。 そしてとうとう、最初のモデルが日本にやって来た。 社長とJが空港に迎えに行き、私達3人はワクワクしながら待っていた。 激動の日々が、始まる。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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