カテゴリ:仕事
モデルのほとんどはアメリカ人だけど、
当然出発地も様々なので到着時間もバラバラ。 その日社長とJは一日中空港と事務所を往復していた。 で、私達といえば、いや、私とユキちゃんは モデル達のあまりの美しさ、男前さにオドオドしてしまい、 目をキラキラさせて彼らと話しまくるカヨちゃんの後ろに隠れて ベルボーイのように彼らの荷物を運んだりしていた。 社長に教わった通りに彼らをマンションに連れて行き、 少し休むように言ってまた次のモデルを待つ。 でも、その作業のうちの会話の部分はカヨちゃんが全部こなしてくれた。 男の子のモデルの時は特に丁寧だったようだけど、これは私の気のせいか…。 中には来日前に届いていた資料とは別人か、という子もいたけれど、 そのほとんどが目を見張るくらい綺麗でハンサム。 女の子はみんな10代か20代前半で、肌が透き通るように白い。 男の子は2人いて、一人はブラピ似、 もう一人は真っ青な瞳に金髪で王子様のような雰囲気だった。 みんな日本の、それも大阪に来るぐらいだから一流のモデルじゃないことは確かだけど、 でも、目の保養なんてもんじゃない!やっぱりモデルって選ばれた人種なんだな~。 2、3日のうちに全員来日し、顔合わせも兼ねて事務所に集まった。 Jがその場を仕切ってモデル達にこの事務所のこと、私達スタッフの紹介、 大阪での仕事の内容、簡単な決まり事などを話した。 Jは、もうすでに何本かオーディションが入っているけど、 ここ何日かは予定が無いからゆっくりしていて、と言っていたが、 クライアントからはただの一本も電話が無い事を知っていた私は 「あぁ、芸能界ってこんなもんか」と、芸能界じゃないのにそんな事を考えて 気が重くなった。 ところで、この事務所がどうやって出来たのかといういきさつ。 ホスト社長は前の大手事務所の社長と自分の待遇のことで喧嘩し、その事務所を辞めた。 そして何のノウハウも人脈も力量も無いのに「独立してやるぅ~!」と意気込み、 仲良しだったスカウトのJと一緒に誰かの紹介で知り合ったバカな金持ちオヤジに 「儲かりまっせ」と話を持ちかけ、そのオヤジもまんまと口車に乗ったらしい。 嘘のような話だが、そのスポンサーがモデルの来日を知ってホイホイと見物にやって来たので、 私はその存在を知ったのだ。 で、その人が帰った後、社長に「あの方はどなたですか?」と聞いたら 「うちのスポンサー」という答えが返ってきて、 その他の詳しいいきさつについてはずいぶん後になってJの口から私は聞いた。 そして、モデル達。 オーディションの予定など全く入っていない事態に社長とJは焦りまくり、 とりあえず知り合いのカメラマンに頼みまくり、仕事の予定などは無いのだが、 ただモデル達の顔ぶれを見てもらうだけの「顔見せ」という予定を 何とか何件か取ることが出来た。 で、Jはまたモデル達に、 「これは百貨店の新聞広告のオーディションだから、ジーンズは良くないよ」 なんて嘘をついている。またまた気が重い…。 そして、ほとんどの女の子がすらりとした足を惜しげもなく見せたミニのワンピースに身を包み、 社長が運転する車に乗せられて偽オーディションに出掛けていった。 モデルがいなくなると、社長とJに頼まれた通り、 私はもちろん、ユキちゃんとカヨちゃんも生まれて初めて電話で営業活動をし始めた。 営業なんてしたこと無かったので、最初は本当につらかった。 でも、以前働いていたので分かるが、広告制作会社やカメラマンの事務所は、 お堅い大企業のような雰囲気では全然無いので、 「あ、この間カード送ってきてくれたとこ? ごめんねぇ~、今仕事無いわ~。また電話しますから」 と軽い調子で優しく断ってくれるところがほとんどだったので助かった。 そして、そのノリの軽さのせいか、 実際のオーディションの予定を教えてくれるクライアントも何軒か出てきた。 多分、「どんなんやろ?」という好奇心からだろうと思うが、私達は本当にうれしかった。 まるで人身売買の片棒を担いでいるような後ろめたさを感じていた私 (他の2人もきっと同じだったろう)は、 ものすごく嬉しくて、早くこの事をモデル達に教えてやりたかった。 とんでもない会社に入ってしまった私は、この時その実態をまだ知らなかったが、 でも、それよりも先に、モデル達に対する責任をしっかりと感じてしまっていた。 それが私にとって良かったのか、悪かったのか…。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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