「追い出し旅行に行く！」

と父が言い出したのは、私の結婚式を３ヶ月後に控えた、ある日のことでした。

「おまえのような出来の悪い娘が嫁に行けるなんて、こんなメデタイ事は無い。
家族全員で行く最後の旅行なんやから、ハワイに連れて行ってやる！」

「ハワイはいいわ、私新婚旅行で行くから。それよりも韓国！韓国に行きたい」

私の言葉に一瞬ムッとした父でしたが、でも旅費が格段に安くなる、
と気付いたのか、反対の言葉は口にしませんでした。
お金も無いくせに無理をして。
でも、父の提案がすごく嬉しかった。
本当に、これが最後の家族旅行。

で、どうして韓国か。
その答えは、韓国料理が大好きだから。
本場の韓国料理を食べてみたい、ただそれだけなんです。
うちの家族にとって「冷麺」といえば韓国冷麺。
特に好きな韓国料理です。
あの独特のゴムのような麺を、幼い時には母に
焼肉用のハサミでチョキチョキしてもらって食べてました。

出発は２月の寒い寒い日でした。
その頃はまだ仁川空港が無く、飛行機は金浦空港に到着しました。
空港に降り立った途端キムチの匂いがして、私達家族５人は我慢できなくなり、
現地添乗員の女性にいきなり、
「韓国冷麺を食べに連れて行って下さい」
とお願いしてしまいました。

ソウルでも有名だというその冷麺専門店で、
私達はもちろん全員に冷麺と、店一番人気だという
キムチの汁を麺に絡めただけのように見える、
いかにも辛そうなものを２つ注文しました。

その店の冷麺は、日本の焼き肉店で食べていたような真っ白い麺じゃなく、
灰色のような、茶色のような麺で、そんなに堅くなかったのが意外でした。
でもスープも美味しく、みんなお酢をたっぷりとかけてすぐに平らげてしまいました。
例の激辛麺は、見た目より辛くなかったんですが、
それでもやっぱり一人分全部食べるのは無理、と思っていたら、
母だけはものすごく気に入ったようで、
「これのためにまた韓国に来なくちゃ」と喜んでいました。

宿泊はロッテホテル。
ソウルで一番のショッピングエリアである明洞（ミョンドン）にも近く、
免税店やロッテ百貨店もすぐ隣りにある、という韓国ビギナーにはピッタリのホテル。
私と妹と母、女３人組は、ホテルに荷物を置いてすぐに百貨店探検に出掛けました。
とにかくその価格にビックリ！
今は日本とあまり変わらないと思うんですが、
私達が行った時は本当に安くて、地下の食料品売り場で、
どうして韓国でそんなもの、と言われそうな物をどっさり買い込んでしまいました。
例えば、ブルーマウンテンのコーヒー豆、とか（笑）

父と兄からブーイングが出たので、そろそろ街に出てみましょうか。

ということで、明日は明洞（ミョンドン）でのショッピングから書きますね。

（続く）