テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
について書いてみようと思う。
彼は、私が初めて大人の付き合いをした人だった。 2つ年上の彼は、それまで同級生としか接したことがない私にはとても頼もしく思え、 彼について行けば何も怖くない、と思わせる存在だった。 何をするにも彼の決定に従い、そんな従順な自分に酔っていた。 しかし、それは本当の自分ではない。 どんな恋愛でもそうだけど、 最初は嫌われたくないという一心で、相手の好きな自分であろうとする。 でも、そんなものは長続きしない。 すぐにボロが出る。そして、衝突。 普通はそんな風に何度も何度も衝突を繰り返し、 その内に本当の相手が見えてきて、 自分が嫌だと思う所も好きな所も、 全部ひっくるめてこの人なんだ、と理解するようになる。 私は、ここからが本当の恋愛のスタートじゃないだろうか、と思う。 でも、この人は違った。 何度衝突しても、繰り返すのはただ一言だけ。 「なんで、おまえはこんなに変わってしまったんだ」 「前のおまえはこんなじゃなかった」 「これが本当の私やねん。前の私は嫌われたくなくて無理してた」 「本当の私が嫌なら、もう続けていかれへん」 でも、彼は私の話なんてまるっきり聞いていない。 「前のおまえに変わってくれ」 「俺は絶対に別れへんから。変わってくれるまで待ってるから」 前の私は「私」じゃない。 変わってしまったら、もうそれは「私」じゃない。 恋をして変わる女の子もいるかもしれないけど、私は変われない。 これをいくら説明しても、彼は一切受け入れようとはしなかった。 衝突が始まった頃は、もちろんまだ私も彼の事が好きだったので、 必死に自分を理解してもらおうと努力した。 でも、彼が全く私の話を聞いてくれようとしないので、 次第に彼との付き合いに疲れていった。 「別れて下さい」 私から告げた。 でも、彼は本気にしていなかった。 「俺は、いつまででも待つって言ってるやん」 この人は、ちっとも私の事を見てくれてなかったんだ。 それが悲しくて泣き続けた。 次の日から、電話もかけず、かかってきても居留守を使った。 彼が現れそうな所には近付かず、彼の前から姿を消した。 ある日、外出の帰りに家路を急いでいると、 見覚えのある車が家の近所に停まっているのに気が付いた。 彼の車だということはすぐに分かった。 私は暗い気持ちになりながら、助手席の方から乗り込んだ。 前を見据えたまま、彼が言った。 「何で…何でこんな事すんねん」 「えっ?」 「俺を困らせてるつもりか」 「困らせてるって、何のこと?」 「もういいから。俺、急げへんから。 おまえが前のようにええ女になってくれるの、何年かかっても俺待つから。 その事でもう文句言えへんし」 何も、分かっていないんだ、私の気持ちなんて。 私は、「今のおまえが良い」って、言ってほしかった。 だけど、もう遅いのだ。もう、私の心にあなたは居ない。 「あのさ、私本気で別れたいねん」 今度は嫌われるために、わざと意地悪な口調でそう言い放った。 「自分勝手で自分だけカワイイっていうあんたなんか、もう大嫌いやねん」 それだけ言うと、勢いよくドアを開け、走って家に帰った。 その日から、真夜中のワン切り電話が始まった。 時間は決まって2時。 最初、私も家族もただのいたずら電話だと思って文句を言うだけだったが、 3日、5日…と続くと、さすがに家族も気味悪がった。 その頃には私はもうだいたいの察しがついていて、 土曜日の夜、電話の前で2時になるのを待っていた。 時間通りに電話のベルが鳴ると同時に私は受話器を取った。 「○○君やろ」とゆっくり聞いた。 「……」 「何でこんな事すんの?私だけじゃないねん、この家にいるの。 みんな迷惑してんねん。言いたい事があるんやったら、 私に直接言うたらええやん」 「…なんで…」 「え?なに?」 「…なんで、こんな事になるねん…俺ら…」 「誰のせいでもない。ただ、あんたは私の事好きじゃないって事。 私も、あんたのこと好きじゃないって事」 「俺はおまえのこと好きや、言うてるやん!そやのにおまえが…。 おまえはエエよ、また誰かのこと好きになって…。 でも、俺はどうなるねん!俺のことはどうでもええんか?」 話にならない…。 これが、かつて私が愛した男か。 私は、情けなくて、悲しくて、また涙を流した。 そして、静かに電話を切った。 その後、頻度は減ったりしたけれど、彼からの真夜中の電話は約一年間続いた。 その間にも、度々彼の車が家の近所に停まっていたのも目撃している。 今で言うストーカー。 私は、この事でひどく傷付き、しばらく本気で恋愛できずにいた。 男性に対して心を閉ざしていた。 ストーカーの被害をテレビなどで見るとき、 今でも私の心はズキズキと痛む。 例え暴力を振るわれなくても、それと同じように深い傷を負ってしまう。 そのことを、理解してほしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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