テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
ほとんど話らしい話もできず、夢の中にいるような気分のまま、
フォークダンスタイムは終わってしまいました。 つないでいた手を離し、私の夢物語もこれでお終い、だと思いました。 フォークダンスのパートナーになってくれたからといって、 彼も私の事を好きだと思うほど、そんなに私は楽天的ではありません。 「今日は、本当にありがとう」 やっとのことで、そう言いました。 「一緒に帰ろか」 やっぱりまだはにかんで、私を見ずに彼はそう言いました。 まだ、もう少し夢の中に居られそうです。 学校から駅までの間、 私は沈黙が怖くて、一所懸命に話題を探しては、 出来るだけ明るく喋り続けました。 今日の学園祭での出し物のこと、テニスの試合のこと、そして、進路のこと。 進路のことは私にとって、結構重要事項。 彼の卒業後の事を、ずっと知りたいと思っていたから。 大学を受験する、と聞いて、 キャンパスを彼女と仲良く歩く彼の姿が目に浮かびました。 どうしても、フォークダンスの時に感じた、あの 「彼女がいる」という感覚が忘れられませんでした。 最後に、本当に良い想い出が出来た、と 一人で感傷的になって、もうほとんど泣きそうになりながら、 それでも私は話し続けました。 電車を降りて、駅の外に出ると、 もうすぐそこに自転車置き場がありました。 あぁ、もう本当にお別れなんだ。 私は覚悟を決めて、最後の挨拶は頑張って良い顔で、と思った時、 「家どこ?送るわ」 「えっ…?い、いいよ」 「こっちから来てるよな、いつも」 勝手にスタスタと歩き出す彼の後を、慌てて追いかける私。 うわ…やさしい…。 胸がキュウキュウ痛くて、もう何も言えないまま、 彼の後に付いて、うつむきながら、私はトボトボと歩きました。 どうして、私の家って駅からこんなに近いんだろうな。 もっと、もっと遠かったら良いのに。 「あ、もうここで良いよ、あそこが家やから」 私の家から3軒前くらいの所で、私はそう言いました。 「キス、しょうか」 「え…?」 と彼の方を見た時には、もう彼の顔がすぐ近くにあって、 一瞬のうちに、すべてが終わってしまいました。 「おやすみ」 彼はそう言うと、走って行ってしまいました。 呆然とする私を残して。 「うそぉ…」 しばらくその場に立ちすくんだまま、 私はたった今、自分に起こったことをまだ信じられずにいました。 でも、いつの間にか、私の手は唇に触れていたんです。 ファーストキスの感触を、決して忘れないように。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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