テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
次の朝、自分に起こった事のどこまでが現実で、
どこからが夢なのか分からないくらい、私はまだ混乱していました。 彼が駅に来る時間をわざと外して家を出てから学校に着くまでの間、 急にニヤついてみたり、眉間にしわを寄せて考え込んでみたり、 他人から見たら挙動不審なヤツだと思われていたかもしれません。 教室に入ると、 例のおせっかいな親友達が、私のところにワッと押し掛けてきました。 「どうやった!?一緒に帰ったんやろ!?」 「うん…そうやねんけど…」 「え?何?何かあったん?」 私は、一人で抱えきれず、彼女達に昨日起こったことを話しました。 「ええ~っ!!あのM君が~っ!?」 彼女達が驚くのも当然です。 だって、あの「大人しい、硬派な、女嫌いな」M君のイメージから、 とても想像できないんです、キスなんて…。 でも、彼女達の次の言葉は予想通りでした。 「よしっ、これで決まりやん!ハッキリさせよ、な!?」 「そうそう、告白しよっ!」 親友二人が勝手に盛り上がるのを見ながら、 実は私も今の自分の気持ちのモヤモヤを、何とかしたいと思っていました。 あのキスの意味を、知りたい。 親友達にテニス部の名簿から彼の自宅の電話番号を調べてきてもらい、 金曜日の夕方、家に私一人になる機会を待って、 私は電話の前で、ものすごく緊張しながらダイヤルを回していました。 ツー、ツー、と呼び出し音が鳴り、 「はい、もしもし」 と、いきなり彼の声。 「あ…M君?あの…○○ですけど…。今…いい…?」 「あぁ、うん。何?」 何だか、迷惑そう…? 「あの…ちょっと話があるんやけど、明日どっかで会ってもらわれへんかな…と思って…」 「ええよ。どこ?」 「じゃ、△神社の隣りの喫茶店、知ってる?」 「うん。で、何時?」 「えっ…と、2時…でいい?」 「わかった、じゃ明日」 ガチャッ、と電話は切れました。 ダメだぁ~!あの感じ。ものすごく嫌そうだった…。 止めときゃ良かった~! 後悔が後から後から押し寄せてきて、息が詰まりそうなくらいでした。 でも、もう今さら後には戻れないんです。 明日、会うしかない。 そして、気持ちを全部吐き出さなきゃ。 約束の時間よりもかなり早く、私はその喫茶店にいました。 時間をかけて気持ちを落ち着かせよう、と思ったんです。 でも、彼に拒絶されるかもしれないその場所で、 冷静になるなんて到底無理。 ミルクティーにも全く口をつけられませんでした。 あのまま、良い想い出のまま残しておいたほうが良かったかな…。 カラン!と入口のドアに付けた鈴が鳴り、 振り向くと、彼が入ってくるのが見えました。 「待った?」 「ううん、今来たとこ」 ウソばっかり…。 彼は、水を持ってきてくれたウェイトレスさんにコーヒーを注文し、 「ハーッ」と大きく伸びをしました。 「もしかして、疲れてる?受験勉強?」 と私が聞くと、 「うん、まあ。全然進めへんけど」 「大変なときに、ごめん」 彼はまたはにかんで笑いながら、 「で、どうしたん?」 と聞きました。 「……あの…M君…て、付き合っている人…とか…いる?」 実際にはそんなに時間は経っていなかったに違いないけれど、 私には、彼の返事までのその間が、ものすごく長く感じられました。 「付き合ってる…というか、まぁそんなような子は…うん」 あの時のショックの大きさは、今でもハッキリと思い出せるほどです。 いまだかつて、短期間であれほどの幸せと、 あれほどの不幸が一度にやってきたことはありません。 じゃあ、どうして? あの時の、あのキスは? 泣きだしたい気持ちを抑え、早く彼の前から立ち去りたい、と思い、 わざとニコニコ笑いながら、 「あ、ごめん!じゃあもういいから」 と言いながら、すっかりぬるくなったミルクティーを、 私は一気に飲み干しました。 「せっかく勉強してたのに、わざわざ来てもらってごめんね」 私は、テーブルに置かれた伝票を取りながら、 「フォークダンス、すっごい嬉しかったから、これ私のおごりで」 と言いました。 「もしかして」 彼が突然口を開きました。 「付き合って、とか、言うてくれるつもりやった?」 半分立ち上がっていた私は、ゆっくりと座り直しました。 そして、諦めて小さく頷きました。 すると、彼が話しだしたんです。 「俺、付き合うとか、嫌やねん。付き合ったら別れなあかんやろ? だから彼女はおれへん。 でも、俺mayoのことずっと良いなと思ってた。だから、こんなんで良かったら、 一緒に遊びに行ったりしたいんやけど」 どんなに不本意でも、その申し出を私が断れるはずがありません。 「うん、ありがとう」 とか何とか答えたような気がします。あまり、よく覚えてないんです。 喜んでいいのか、悲しんでいいのか、本当に分からなくて。 その後、どうでも良いようなことを少し話して、 次のデートの約束も何も無く、 (というか、彼女でもないからデートじゃないんだけど) 私達は別れました。 振られたわけじゃないんだけど、 帰り道の私は、なぜかもっとひどい気分でした。 どっちつかず。 中途半端。 二股?それとも三股かも。 こんな宙ぶらりんな状態なんて、望んでなかった。 これから、どうなるんだろう。 ていうか、彼はものすごいひどいヤツ? そうは、全然見えないけれど…。 その日から、私の苦悩の日々が始まったのでした。 (どこまで書くんだぁ~!…続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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