テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
あの喫茶店での出来事の後、
彼と私との関係が変化することは無く、 学園祭までの当たり前の日常が、また戻ってきました。 毎朝の短い挨拶。 その後も一緒に登校することもなく、 学校の廊下で会っても彼は決して私のために立ち止まったりしませんでした。 ただ、少しはにかんで笑ってくれるだけ。 でも、その笑顔を見ただけで、 私はフォークダンスの夜のことを思い出し、一人で顔を赤くしてしまうんです。 あのキスが無かったら、こんな事にはならなかったのに。 告白しようなんて、そんな大それた事も考えたりしなかったのに。 彼の提案をのんでしまった私に出来る事は、 ただ待つことだけでした。 でも、季節はもうすぐ冬。 お互いに受験生の私達にとって、勉強も最後の追い込みです。 恋人同士なら、一緒に勉強しよう、とか、 たまには息抜きでデートしよう、とか 私から電話も出来るのですが、 私は彼の恋人じゃない。 ただの同級生…?でも、ない。…と思いたい。 でも、電話は出来ない、絶対に。 とても勉強に集中できるような状態じゃなかった私は、 何とかしたくて、一つ手段を考えました。 電話じゃなく、手紙。 手紙なら、電話のように相手の迷惑にはならないだろう。 都合の良い時に、読んでもらえるし。 (この時に、携帯のメールがあれば…!) だからと言って、私はあなたの何ですか、なんて間違っても書きません。 受験勉強がんばって。私も頑張る。みたいな「例文」のような内容です。 でも、投函する時は、もう心臓が破裂しそうでした。 今までの恋愛で、私がこんなに気を遣った相手はいませんでした。 友達感覚な相手ばかりで、常に同等。 言いたい事もハッキリ言うし、甘えたい時は甘えるし。 なのに、今回はどうしてこんなになっちゃったんだろう。 その時の私は、これが本当の「初恋」だとは気付いてませんでした。 郵便受けを気にするのを諦めかけたある日、 その真っ白い封筒はポツンと送られてきました。 郵便受けをわざと見ないようにしていた私は、 夕飯前に、母からその封筒を渡されたんです。 かわいげの無い、お洒落でもない、ただの白の事務封筒。 表にはものすごくきれいな字で、私の名前が書かれていました。 大人の人から手紙なんて、と思いながら裏を見て、私は声を上げてしまいました。 住所と、彼の名前。 慌てて自分の部屋に行き、ハサミで丁寧に封を開けました。 かわいげの無い、お洒落でもない、ただの白の便箋に、 ウソでしょ、と言うくらいきれいな字で、それも縦書きで、 (私の手紙は丸文字、横書き、柄付きレターセット) 「坊主も走る師走となりましたが、お元気ですか?」 から始まっていました。 いきなり「坊主」という文字が目に入ってきて、 私は混乱しながら読み進みました。 時候の挨拶、私の手紙に対するお礼、そして最後に 「受験が終わったら会いたいです」 何度も何度も読み返した後、 便箋を折りたたみながら、私はクスクスと笑っていました。 オジンくさ~!と独り言を言いながら。 彼は、変わっている。 それも、ものすごく。 そう思ったら、彼の提案も頷けます。 この手紙を読むまでは、 実は彼はすごいプレイボーイじゃないだろうか、とか 私はからかわれてるんじゃないだろうか、とか思い悩んでいた私。 でも、もうスッキリしました。 そして、前よりもっと彼の事が好きになりました。 受験が終わったら会える。 だから、今は受験勉強に専念しよう。 受験合格のご褒美のように、 私は彼との初デート(デートで良いのだ!)を楽しみにしていました。 でもその時の私は、彼からの手紙を、 その後何年にもわたって受け取ることになるとは、 予想すらしていませんでした。 (いつまで書くのか…私にも分かりません…続きます) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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