テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
彼との初デートを励みにしながら受験勉強を乗り切った私は、
どうにか志望していた短大に合格できました。 彼はどうだったんだろう、と気にはなったのですが、 電話も、さすがにこの事は手紙にも書きにくく、 卒業式の日に、風の噂で彼が受験に落ちた、と知りました。 二人で合格を喜びあう、という図を思い浮かべていた私は、 彼の事が心配で仕方がありませんでした。 そして、初デートが遠退いた事を覚悟していました。 でも、そんな私の予想とは裏腹に、 卒業式から何日か後、なんと、彼から電話があったんです。 「会う?」 ぶっきらぼうな彼の誘い方に苦笑しながらも、 私は受験のことをどう切り出そうか、と悩んでいました。 「来年、もう一度受けるん?」 やっとのことでそう聞くと、 「いや、落ちたら歯科技工士になる、って決めてたから専門学校」 サラリとそう言う彼に、ちょっと安心しました。 そして、その週の土曜日に、私達は会う約束をしたんです。 彼とのデートは、 まるでお見合いをした相手との初デート(知らないけど)のような内容でした。 こんなに不思議な彼の事、一体どんなところに連れて行ってくれるんだろう、 とワクワクドキドキしていた私は、何だかとても意外でした。 まず映画、そしてひと休みにコーヒーショップ、 そしてブラブラとウィンドウショッピング、で最後に晩ごはん。 普通すぎるくらいに普通なそのデート。 でも、その間に私達が交わす言葉はものすごく少なくて、 ポツリと言う彼の言葉はやっぱり彼っぽい。 楽しくなさそうに、突然友達の話をし始め、 「Sおるやん?あいつといつもmayoの事、ええな~て話してた」 「S、怒るやろな~、こんなとこ見たら」 なんて言う。顔の表情と話の内容が全く繋がらないせいで、 私はいつも驚かされ、その後また顔を赤くさせられてしまうんです。 今で言うオタクな雰囲気で、いつもS君と二人でコソコソ話してた彼が、 実はこんな話してたなんて…。 普通だけど、普通じゃないそのデートは、私を充分幸せにしてくれました。 一番緊張したのは、駅から家までの帰り道です。 だって、あの時のことが蘇ってきて、 もしかしたら、今日もまた…なんて期待してしまって。 駅に着く前から、私は黙りこんでしまいました。 駅の外に出て、この日は先に彼が自転車を取りに行きました。 そして、自転車を押しながら、彼はまた私を送ってくれました。 でも、あのキスの場所の手前で、彼は 「じゃ、また連絡するから」 と自転車の向きを変えてしまったんです。 「あ、うん」 と小さく頷いた私に手を振り、 「バイバイ」 と、彼。 「バイバイ」 と、私。 小さくなっていく彼の背中を見つめながら、私は大きな溜め息をつきました。 「バカ」 女心の分からんヤツ。 せめて、手ぐらい繋ぎたかった。 あ…でも、そうか。 私、彼女じゃないんだ…。 また急に寂しさが込み上げてきて、胸がキュウッと痛みました。 でも今は、今日一日一緒に居られた幸せに浸っていよう。 これからの事は考えずに。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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