テーマ:恋愛について(2608)
カテゴリ:ひとりごと
K君には、短大の友人達と出掛ける、と嘘をつきました。
直接会って話すとバレてしまいそうなので、電話で。 嘘をつく、という行為が心苦しくて、 沈んだ気持ちのまま、その日はやって来ました。 約束の場所に現れたM君は、 1年前と何も変わっていませんでした。 髪型も、トラッドな服装も、はにかんだ笑顔も。 でも、 私は変わっていたかもしれません。 服装はK君の服装に合わせて少し大人っぽくなっていたし、 それより何より、M君を見つめる目がきっと違っていたでしょう。 好きな人を見る目じゃなかった。そう思います。 好きだった人、好きで好きで仕方が無かった人、を見る目。 もちろん、決して忘れられない人です。 でも、K君の存在がある今、私の事を大事にしてくれるK君に嘘をついてまで、 M君と会っている自分が許せませんでした。 いつものデートコース。 でも、去年よりもっと言葉少ない二人。 私は、あまり話さないですむように、 買い物があるから、と何軒も服屋さんのハシゴをしました。 M君が買い物に付き合うのは嫌いに違いない、と知りながら。 そして、両方の手にお店の紙袋を下げながら、 まだまだお店を回ろうと、せかせか歩いている時、 私は何かにつまずいて転んでしまったんです。 紙袋と一緒に倒れ込んでしまった私に、 M君は手を差し出しました。 「大丈夫か?」 はにかんでいない、やさしい笑顔。 私は、少し躊躇しながら、手を出しました。 グイッと引き寄せて立ち上がらせてくれるその手。 フォークダンスの夜が蘇りました。 私は、涙を堪えるのに必死でした。 最後に、手を握ってもらえて良かった。 会うのはこれで最後、と決めていたから。 家の近くまで送ってもらい、彼が自転車の向きを変えて 「バイバイ」 と手を振る姿が涙でユラユラしています。 大丈夫、周りが暗いから彼には見えないはず。 私も手を振りました。 「バイバイ」 今日は、見えなくなるまで彼の背中を見ておこう。 それからまた1年後、就職してK君との交際を順調に続けていた私の元に、 また白い封筒が届きました。 でも、その週の金曜日、私はわざと残業して、遅くまで家には帰りませんでした。 帰宅すると、案の定M君から電話があったらしく、 「連絡を下さい」という伝言を母から受け取ったのですが、 私は連絡しませんでした。 本当は、すごくつらかった。 でも、これ以上会うと、いつか私はM君に嫌われるような事を言ってしまう。 M君から会いたくない、と思われるのだけは絶対に嫌でした。 それから数日間は、出来るだけ家に居ないようにし、 M君からの電話を避けました。 でも、結局M君からの電話は1度きりで、 それがまたすごく彼らしいな、と思いながら、 私はM君を、想い出の人にしたんです。 数年後、私はM君に手紙を書きました。 私からの2通目の手紙。 日本から遠く離れたカナダから。 その時の私は、彼の事をただ本当に懐かしく、 初恋の良い想い出として語ることが出来るようになっていました。 今、彼がどうしているかを知りたかった。 そして、聞いてみたかった。 「あの時、本当はちゃんとした彼女がいたんじゃないの?」って。 そして、その彼女が今の彼の奥さんだとしたら本当に良いのにな、 と心からそう思っていました。 でも、待っても待っても返事は来ませんでした。 仕方…ないよな。 もう何年も経ってるんだし。 でも、時候の挨拶から始まる、彼の手紙をもう一度読みたかった。 そして、手紙を出してから1ヶ月以上たったある日、 一通の手紙が私に届きました。 それは、私がM君に出した手紙。 「転居先不明」 戻ってきてしまったんです、私のところに。 帰国してから、一度電話もしてみました。 「現在使われておりません」 というアナウンスを聞きながら、 私は受話器を置きました。 結局、M君が私に対して持っていた想いが何だったのか、聞けませんでした。 今どこにいて、どんな暮らしをしているのかさえ、知ることは出来ません。 同級生に会う度に尋ねてみるのですが、誰も彼の事は知らないようです。 彼は彼のまま、いつまでも不思議なままです。 そしてそれは、これからもずっと、私の心から彼が消える事はない、という事。 こんな初恋も、良いんじゃないかな。 旦那様には、やっぱり話せないけど。 (終わりです!長々と失礼しました!) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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