カテゴリ:ひとりごと
今日は妹の事を書こうと思います。
京都の美大に入ってから2年前まで京都で一人暮らしだった妹。 その間ずっと京大前の中古レコードCD屋さんでアルバイトしていました。 絵を描く事と同じくらい音楽が好きで、 親からの仕送りもアルバイト代もすべて画材とCDに消え、 そのせいでものすごく貧しい生活をしていました。 彼女が暮らすアパートは哲学の道を少し上がったところにあって 環境としては申し分ないんですが、 とにかくお化け屋敷そのままで、いつ崩れ落ちるか、というくらいに古く、 住んでいるのはヒッピーのような変な外人さんか 京大の苦学生か、一人暮らしのおばあちゃんだけ。 そして妹。 お風呂は歩いて10分のところにある銭湯。 もちろんトイレは共同。 部屋全体が傾いていて、ものすごく狭いんです。 いや、そりゃあ半端じゃなく安いけど。 大学入学当初は自宅通学の約束だったんです。 でも、課題が多くて学校に深夜までいたいから、と 妹が勝手に決めてきたそのアパートを初めて見た両親は ショックで声も出なかったそうです。 お願いだからもっと普通(笑)のところにしてくれ、 と懇願する両親の願いもむなしく、 頑固な妹はそのアパートが、 そのアパートで、じゃなく、そのアパートがいい、と言って聞きませんでした。 きっと妹は両親に気を遣っていたんだと思います。 出来るだけ、お金がかからないように、と。 でも、妹はそのアパートでの生活を、 京都での毎日を、本当に楽しんでいるようでした。 周りの人間はみんな妹の事を「変わってる」と言います。 小さい頃から妹はそう言われていました。 大学を卒業してもずっとアルバイトのまま、 お金にならない絵を描く毎日。 このまま年を取って、あのアパートに住むおばあちゃんのようになるのか、と 両親はいつもいつも心配ばかりしていました。 そして、十何年。 京都に骨を埋めるのかと思っていた妹が、 2年前に京都を後にしました。 結婚したんです。アルバイト先で知りあった、 大阪の中古レコードCD屋さんの店主と。 旦那さんのお店は西区北堀江にあります。 そして今は妹が毎日店番をしています。 買取りが多くて中々儲けに繋がらない、と 京都時代に負けないほどの貧乏暮らしをしている妹夫婦ですが、 でも好きな物に囲まれての毎日は楽しそうです。 先日、娘を連れてお店に遊びに行きました。 妹一人だけで店番をしているので、 娘がお手伝いする、と言い出しました。 はたきでディスプレーのLPやCDの埃を取ったり、 商品を綺麗に並べ直したり、 売れた商品番号をノートにつけたり、 大忙しです。 そして、私も妹も何も言ってないのに、娘が自分から 「いらっしゃいませ」 「ありがとうございました」 と真面目な顔で言ってるのには笑っちゃいました。 「みーねーちゃん(妹の事です)すごいね」 その日の夜、娘が言いました。 「何で?」と聞くと、 「何人もお客さんにいっぱい質問されてたけど、 どのレコードのことも、CDのことも、スラスラ答えてたやろ? すごいなぁ~、みーねーちゃんは」 そして、 「私、中学入れたら学校の帰りにお手伝いに行くわ。 で、みーねーちゃんみたいに音楽のこといっぱい分かるようになりたい」 私は何だかすごく嬉しくて、 「うん、頑張ってお手伝いしてあげてね」 と娘に言いながら、 妹の事を考えていました。 クラシックでも、ジャズでも、ロックでもヒップホップでも、 聞かれたら即答えていたよなぁ~、あの子。 それもお客さんが一番欲しい答えを的確に。 両親が、親戚のおばちゃんが、 そして彼女を「変わってる」と言った人達みんなが どれだけ彼女の京都での貧しい生活を、今の経済的に苦しい毎日を 心配したりバカにしたりするかもしれないけれど、 でも、私は彼女をすごく幸せだと思うんです。 すごく素敵だと思うんです。 そう、彼女は私の自慢の妹。 北堀江にお越しの際は、ぜひ寄ってやって下さいな。 お洒落でも何でもない、殺風景な小さなお店ですが、 音楽のことならちょっとうるさい店員が、 あなたのどんな疑問にも即お答えしますので。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|