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学習の問題
アスペルガー症候群の子どもの成績はさまざまです。かなり優秀な成績のこともあれば全体に学習が苦手なこともあります。多くの子どもは普通学級で学んでいますが、小学校も高学年になると普通学級での学業継続が難しくなり特殊学級に転籍することもあります。社会や理科などが好きで図鑑などから詳細な知識を得ていることも珍しくありません。漢和辞典やことわざ辞典などで沢山の熟語やことわざを知っている子どももいます。一部の知的に高いアスペルガー症候群の人は大学にも進学します。理系にいくことも文系にいくこともあります。大学で自主的に研究計画や実験計画をたてることは難しい人が多いようです。 字を書く問題 不器用さの項でも説明しましたが、字を書くのが苦手な子どもが多いようです。まず字の書き方が乱雑で「みみずのはったような」字をかくことがあります。全体的な成績は悪くないのに中学生になっても「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」などの区別で混乱したり、簡単な漢字を覚えられないことがあります。「偏」と「旁」の位置が逆転したり、いわゆる鏡文字を書く子もいます。文末の「は」と「わ」の混同なども時にみられます。 算数の問題 独特の計算の方法をとることがあります。アスペルガーの原著にも、47-15を47に3を足して50にし15を引いてから3を引く方法をとる男児の例があげられています。機械的な計算はできても、文章題になると難しいことがあります。筆算は得意でも暗算は苦手な場合や、計算のみだと暗算が得意でも、問題を聞いて解くときにはとても苦労する場合もあります。驚くほど正確に計算できる場合もあり、何年も先までカレンダーの曜日を計算できたりする子どもがいることはよく話題になります。 その他の心理学的問題~心を読むこと 日常、大人はもちろん子どもでも相手の気持ちを読みながら暮らしています。相手が自分を騙そうとしているとか、本当は喜んでいないのに喜んだふりをしている、そういう相手の意図を読むことで日常の生活が成り立っています。このように相手の気持ちを読む能力は通常では4-5歳くらいから芽生え始めるといわれています。アスペルガー症候群の子どもは相手の言ったことをそのまま単刀直入に受け止めてしまいがちです。そのため騙されやすかったり、利用されたりしやすいのです。 注意の問題 アスペルガー症候群の子どもでは注意の集中や配分に問題があることがあります。配分に問題があると、あることをしている時に声をかけても気がつかなかったりします。ゲームに集中しているときに声をかけても振り向かないことは一般の子どもでもよくありますが、アスペルガー症候群の子どもではそれが極端な形で色々な場で生じがちです。私たちは、何かに集中している時でも非常ベルの音には気がつきます。何かに集中していても、何%かの注意は他に向けられているわけで、そうでないと危なくて都会では生活できないでしょう。アスペルガー症候群の子どもはそういった注意の配分が苦手で、あることに集中すると別のことには気がつかない傾向があります。あることをしていて別のことに注意を移行することも苦手なことがあります。前にやっていたことをいつまでも頭の中で考えていて新しいことがお留守になってしまうのです。 計画をたてること 自分で物事を計画して、複数のことがらを連続して実行していくことが苦手なことが多いのです。ある程度周囲がプランを立ててあげないと、一人で複数のことを連続して実行していくことは難しいようです。よく子どもの自主性を尊重する教育と言って、何もこちらで準備しなくて子どもの自由にさせるやり方が一部で推奨されていますが、このやり方はアスペルガー症候群の子どもには合いません。 アスペルガー症候群の子どもとの接し方 援助の基本方針はまずアスペルガー症候群を理解するということです。アスペルガー症候群の子どもは社会性、コミュニケーション、想像力の3領域に障害があります。困った、不適切な行動、風変わりな行動をとったとしても、「わざとやっている」とか「ふざけている」とかとらないで下さい。そのような行動の多くはアスペルガー症候群特有のハンディキャップのために生じているのです。以下に述べるのはアスペルガー症候群の子どもとのつきあい方のいくつかのコツです。 予測しやすい環境 アスペルガー症候群の子どもは予測できないことや変化に対して苦痛を感じることが多いのです。どこで何が予定されているかということをなるべく前もって伝えましょう。言葉だけでなく文字(年少の場合は絵や写真)で伝えるのが効果的です。つまりスケジュールを予告することが大切なのです。現実の生活では予定どおりにいかないことも沢山あります。予定外の出来事やスケジュールの変更も、できるだけ本人にわかるようにたとえ直前であっても明確に伝えることが大切です。 安全で穏やかな環境 アスペルガー症候群の子どもは騒々しい環境が苦手です。余分な刺激の少ない静かな環境の方が本来の能力を発揮できます。大声で叱ったりすることは逆効果です。できるだけ穏やかに接するようにしましょう。教師や親はできるだけ感情的にならず穏やかに冷静に話をする姿勢を持ちましょう。大人が感情的になってしまうと、アスペルガー症候群の子どもは大人が言いたいことよりも感情的になったということのみに気持ちが向いてしまいがちです。もちろん大人にも感情的になってしまう理由は十分あるのですが、子どもはその情況には無頓着で「怒られた」「拒否された」という気持ちのみが残ってしまうことが多いのです。子どもの行動が変化するには長い時間が必要です。困った行動は少しずつ、少しずつ改善していくのを目標にしましょう。時には発達するのを待つという姿勢も大事です。子どもにとって無理なことを強制するのはやめましょう。一人で乗り越えさせようとすると多くの場合、自信をなくしてしまうか自分の興味のあることしかしなくなります。 アスペルガー症候群の子どもは非常にしばしばいじめの対象になります。学校の休み時間、登下校時など大人の目の届かないところでいじめられていることが多いのです。自分一人の力でいじめに立ち向かっていくことは不可能です。またいじめられていることを教師や親に告げない、告げようとしない場合も多いのです。できるだけ大人やしっかりした年長者の監督下におくことが必要です。 ルールや指示は明確にしましょう アスペルガー症候群の子どもにとって「暗黙のルール」の理解は困難です。ルールはできるだけ明確で、その子どもの能力の範囲内で実行可能なルールにしましょう。曖昧な指示や皮肉、言外の意味の理解を期待した指示は理解できないと思った方が良いでしょう。場に関係のないことをしつこく聞いたり話したがる場合には、「今この場ではその話はできない」とか「この話は5分で打ち切る」などと情況に応じて明確に伝えた上で、「いつどこでなら話をしても良い」という代替の提案をできるだけするようにしましょう。 できるだけポジティブに接しましょう アスペルガー症候群の子どもは否定的な言動に対して敏感です。記憶力も非常に良いことが多いので、後々まで尾を引きがちです。小学校の一年生の時に先生に叱られたことを覚えていて大人になってから唐突に教師の住所を調べて抗議の手紙を送ったりすることもあるほどです。アスペルガー症候群の子どもは思春期頃になると自分の言動が他の多くの子どもと違っていることに気づき、落ち込むことがあります。小学校などでも、どちらかというと教師や大人から叱責される行動をしてしまうことが多いので、もともと自信をなくしがちです。できるだけ長所をみつけて誉めるようにしましょう。 子どものこだわり、関心事は矯正するより何かに生かす方向で考えましょう アスペルガー症候群の子どもの関心事というのは大人が変えようと思ってもなかなか変わりません。でも自然に関心ごとが移っていくことは意外に多いのです。例えば電車に強い関心があれば、駅名から漢字を覚えるとか路線図から地理の勉強につなげていくとか、電車の構造から理科の勉強につなげていけないかなどと、子どもの興味を良い方向に伸ばすように考えてみましょう。 大人を試すような行動をする場合にも冷静に対応しましょう わざとのように困った行動をして、教師や親がどこまで許容するか「試す」ように見える子どももいます。しかし、こういった行動は本当に「わざと」やっているわけではなくて「周囲が困る」ということの認識不足のことが多いのです。つまり相手の気持ちを理解することの障害から現れてくる行動なのです。やっていいことと悪いことを明白なルールとして、子どもが理解しやすいように文字や言葉で繰り返し冷静に穏やかに伝えていくようにするのが結局は一番の早道です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.02.09 02:15:56
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