昨日、惠子は、帰ってくるなり、「この前のラテン語の単語テストが今日返されたの。ママ、私は何点だったと思う?」とうれしそうに聞いてきた。うれしい顔をしているということは、いい成績だったってことだから、「1マイナス?」と聞いたら、「はずれー、1でした。全部あってたの。うれしい!」とすごく喜んでいた。まあ、テスト自体、それほど難しくなかったようだが、それでも、7年生になって最初のテストで、満点だったので、「7年生でもやっていける。」という自信につながったようだ。
惠子と賢浩は、よくけんかをする。お互いがお互いをライバル視しており、相手から「バカ」とか「まぬけ」と言われるのが我慢ならないらしい。最近、惠子は、賢浩に対して、ラテン語で言い返すようになった。たぶん、「本当にむかつくやつだ。」とか「頭が悪いなー。」とか、そんなことを言っているのだと思うのだが、こちらにはわからない。ドイツ語や英語で言われるより、わからない分、ラテン語で言われると、腹が立つ。火に油を注ぐことになるので、惠子にラテン語を家で使うな!とラテン語禁止令を出した。そうしたら、泣き出してしまった。日常生活でもラテン語を使うのは、上達の早道だとは思うのだが、口論がエスカレートするだけなので、仕方ない。
最近、賢浩も、「アディダス」とか「ナイキ」とか、そういうスポーツブランド品を着たがるようになった。ドイツのサッカーのナショナルチームのレプリカユニフォームをもっていたのだが、小さくなってきてしまったので、義父母に何が欲しいか聞かれた時に、賢浩はそれをリクエストした。でも、そんなものが香港で売っているとは思わなかったので、こちらで買ってあげた。しかし、先日、香港から荷物が届き、その中に、賢浩のリクエストしていた「ドイツのサッカーウェア」が入っていた。背番号13番の「バラック」のユニフォーム。そもそも香港で、ドイツのナショナルチームのユニフォームが買えるのが驚き。でも、なんだか、怪しいにおいがする。香港で着る分にはいいが、ドイツでこのユニフォームを着せるのは、勇気がいる。以前ほど人気がないとは言え、「バラック」はスターであり、バラックの名前の入ったサッカーウェアを着ている子供はたくさんいる。友達に、「お前の着ているのは、僕のとちょっと違うみたい。偽者じゃない?」と指摘されたら、悲しい。・・夫にそう話したら、「そんなこと気にする、子供いる?」と言われた。でも、やっぱりイヤ。
義父母は、偽物とかそんなことは考えていなかったと思う。賢浩のリクエストを一生懸命探してくれただけなのだと思う。義父母に写真を送ったら、「すごく似合っているわね。そういうのをもっと探して、送るわね。」と言われた。「やめてください。」とも言いづらい。日頃から、「海賊版は絶対に送らないで!」と言っているけど、たぶん、このスポーツウェアが偽物かどうかなんて、わからないのだと思う。私も確信はないけど、なんとなくそう疑っているだけ。でも、賢浩本人がすごく気に入っていて、学校の体育の時間やテニスの時に好んで着ている。先日は、テニスコートで、近くで工事をしていたおじさんが、賢浩を見て、「おや、バラックがテニスをしている。」と言って笑っていた。
中国製というと、すぐに、「偽物」「安物」ってイメージするけど、最近は、いい物も出てきているようだ。私の住んでいる町には、ピアノの有名メーカーがあるのだが、そこの人の話では、あと数年したら、中国製が台頭してくるだろうから、先々の経営はどうなるかわからない、と言っていた。テレビでも、中国の「パールリバー」というピアノメーカーが、世界の有名ピアニストを呼んで、自社製品のプロモーションをしていることが放映されていた。もしかしたら、北京オリンピックの開会式で、ランランが弾いたピアノは、パールリバー社のものかもしれない。メイドインチャイナが、高品質と同義語になる日も遠い話ではないのかもしれない。そうなれば、いちいち香港からの荷物に、疑心暗鬼になることもなくなるだろうし、いちいち、税関に呼ばれて、荷物をとりに行く手間も省けるのに・・・。