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カテゴリ:子供
昨日、ちょうど夕飯の支度をしようと思っていたところに、恵子から電話があった。前日のお昼にもかかってきたのだけど、そのとき、「今日は、夕方、友達と映画を見に行くの」と言っていた。だから、「映画どうだった?」と聞いたら、「いけなかった」という返事。映画を見てから、寮に戻ってくると、10時半ごろになる。寮の門限は夜10時。外出には申請が必要だけど、遅くなるとあらかじめわかっている場合は、先生が門をあけておいてくれる。しかし、その日は、「私はそんな時間まで待ちたくないから、だめ」と却下されてしまったのだそうだ。11時ごろまでの外出が許されるときもあるそうだが、恵子たちの申請は「待つのがいや」という理由で却下され、すごく楽しみにしていた恵子たちは落ち込んだそうだ。
「CちゃんとFちゃんと行く予定だったんだけど、だめになって、Fちゃんなんて、泣いていたよ。」と恵子が言った。「Cちゃんも泣いていたかも・・・」といいながら、恵子も電話口で泣き出したのでびっくりした。今週末は、恵子は、ラテン語のコンクール予選を通過した人が招待されるセミナーに参加することになっているし、ほかの子達は、クラス旅行でミュンヘンに行くので、映画にいけない。数少ないチャンスだったのに、だめになって残念だとは思うが、泣くほどのことかな・・・と実は思ってしまったが、もちろんそんなことは恵子には言わない。 しかし、恵子の泣いている理由は、映画のことではなかった。 「今日、地理の授業があったの。たくさん宿題が出ていて、私は一応全部やっていったんだよね。だから、授業中先生が質問したとき、手を上げて発言したの。でも、ほかの子も手を上げているのに、その時間は、私だけが集中的に先生に指されたの。そしたら、誰かが、《一人だけを指すのは公平じゃない》、って文句を言ったの。先生は、《今日は、恵子の口頭での評価をつけたいから、一番最初に手を上げて発言した彼女を集中的に指している。ほかの人にもまたチャンスはあるから、問題ない。》って言ったんだよ。私も、先生のやり方は変だと思ったけど、聞かれたことには全部答えたの。そしたら、私の口頭評価が15点(満点)になったの。授業後、CちゃんとFちゃん(恵子の仲がいい友達)に、《恵子は先生にひいきされているよね、だから、成績がいいんだよね、って誰かが言っていたけど、私もそう思う》って言われたの。すごくショックで、ルームメートにも聞いてみたんだけど、彼女も《恵子は授業中よく発言するけど、ぜんぜん見当違いの答えのときも多い。他の子のほうが、正しいことを言っているのに、先生は恵子の発言を評価しているときが多くて、不思議に思うことはある。恵子は、授業にあたかも参加してしているように見せるのがうまいと思う。》って言ったの。私が成績がいいのは、私の実力ではなくて、先生がひいきしているからだって思われているのかと思うと、ショックで・・・・」と泣いていた。 「やっぱり、口頭評価もよくしたいから、授業中、なるべく発言するように努力しているんだよね。それなのに、答えが間違っているのに発言するって言われて・・・・。答えが間違っているのに、評価がいいのは、先生が恵子のことを《よくできる子》に仕立てているからなんだって言われて、もう悲しくて悲しくて・・・・」 先生だって人間だから、一生懸命授業を聞いてくれて。よく発言する子にはいい評価をしたくなるし、まったくやる気を見せない子には、がっかりするのは当たり前。でも、だからといって、成績を自分の好き嫌いでつけることはしないと思う。0.5ポイントぐらいのさじ加減はあるかもしれないけど、成績が13ポイントの子がえこひいきによって15になることはないし、その逆もないはずだ。それに、恵ちゃんの場合は、1つや2つの教科だけではなく、全教科成績がいい。先生全員にひいきされているから、という説明はおかしい。恵ちゃんの授業に対する取り組みは間違っていないし、恵ちゃんの立派な成績は恵ちゃんの努力の賜物だということをママは知っているから、気にすることはない。・・・そう私は話した。でも、恵子は泣き止まない。 「恵ちゃんが、突き抜けた存在だったら、そんなこといわれないんじゃない?友達の発言を無視するか、気になるなら、とことんがんばって、誰にも何も言わせない実力をみせるか、どちらかしかないかも・・・。だって、地元のギムナジウムにいたときは、恵ちゃんの成績がいいのは、先生にひいきされているからだ、なんていう子、誰も居なかったでしょ? 」といったら、「そこのギムナジウムでも言われたことあるよ。英語の授業中、別のことをしていて、ぜんぜん授業に参加していないのに、私の成績がいいのはおかしい、って先生に文句を言っている子がいたよ。」といわれた。恵子が英語の授業中、自分の好きなことをしていてもいい、テストさえ受ければいい、というのは、先生とすでに合意した事項だった。授業が簡単すぎて退屈だったからだ。恵子は、9年生ですでに、ケンブリッジ英検アドバンスレベルをA評価で合格したわけで、実力があることも証明できたし、授業は受けていなくても、常にテストは満点だったし、先生のえこひいきがあったわけではない。でも、事情を知らない子には、ひいきされているとうつったのだろう。 私は夕飯の支度中だったのだが、電話をしながらでは、野菜を切るのもままならない。横で、ニコちゃんが、「おなかすいたー」とつきまとう。でも、恵子は泣き止まないし、この状態では電話を切ることもできなかった。 1時間以上話した。 「恵ちゃん、夕飯は?」と聞いたら、「食欲がない」といわれた。何もしてあげることができない・・・ 横で、ニコちゃんが、うるさいので、恵子は、「じゃあ、そろそろ電話を切るね。」と言った。私は、「何かまたもやもやしたら、夜中でもいつでもかけてきて。携帯を枕元において寝るから。24時間大丈夫だよ。」と伝えた。 電話を切った後、携帯のバッテリーがほとんどないことに気づき、台所で充電した。急いで、夕飯の支度の続き・・・その後、本当にばたばたしていて、うっかり、携帯を充電していることを忘れて、そのままニコちゃんを寝かしつけながら一緒に寝てしまった。 はっと目が覚めた。午前4時だった。急いで携帯をチェックしたら、2回恵子から電話があったという履歴が残っていた。しまった・・・・最大の不覚。あんだけ長話をした後に、また夜中にかけてくるって、きっとよほどつらかったに違いない。あーあ、母親失格だなー 昨日、電話後、賢浩が、「どうしたの、恵ちゃん?」と聞いてきたので、事情を説明した。そしたら、賢浩は、「ルームメートの子がそんな意地悪なことを恵ちゃんにいったのは、ママが先生にメールしたからじゃないの?」と言った。実は、私もそのことが気になっていたのだけど、私からは恵子に聞けなかった。 「僕がそんなこといわれたら、《だから、何? くやしかったら、自分もたくさん発言してみれば?》とか、《お前の成績が悪いのは馬鹿だから。俺のがいいのは、俺の頭がいいから》って言うけどね。恵ちゃんは、優しいから、言い返せないんだよね。」と言っていた。まあ、残念ながら、賢浩に、「お前の成績がいいのは・・・」なんて僻みっぽいこと言う人は誰も居ないと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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