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ドイツでマルチリンガルを育てる

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2018年01月30日
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カテゴリ:子供
今日もニコちゃん事で仕事を早退。
校長から「ニコの態度は限度を超えているので話し合いたい。」と手紙をもらい、今日その話し合いがあった。
手紙には「宿題を見てくれる上級生を侮辱した」と書いてあった。
ニコちゃんは「上級生を侮辱はしていない、それは僕のせいではない。その点については反論したい。」と言い出し、一緒についてくることになった。

夫は仕事の都合でどうしても話し合いに参加できなかったので、事前に校長にメールを送った。
「ニコはADHSと言われていて、家でもいろいろな問題を起こしている。近々小児科と話し合いを持つ予定でいる。改善策を模索しているので、学年末までは猶予が欲しい。ついては話し合いではこれこれこういうことを議論したい。」とかなり詳しいアジェンダを作っていた。私たちはたぶん校長はニコを別の学校に転校させたほうがいいという話を切り出すのではないかと想定していたからだ。夫はできれば電話で話し合いに参加したいと言っていたのだが、ややこしくなるので、夫には電話をしなかった。

まず校長に「最初に一つ聞きたいのですが、ご主人からメールを何通かもらいました。名前にDr.が付いていましたが、お医者さんなんですか?」と言われた。「いいえ、エンジニアです。」と答えると、「どこで働いているんですか?」と聞かれた。ドイツでは親の職業や家庭環境をあまり質問されたことがなかったのでびっくりした。

次に聞かれたのは「ご主人からのメールには、ニコはADHSと書かれていましたが、それはきちんとした診断がくだされているのですか?」ということだった。特別養護資格を持っている先生からの診断で、医者から診断されたわけではない、と説明した。投薬を勧められていて、その是非について近々小児科医と話し合いを持つ予定になっていることも話した。
校長は「うーん、薬で元気な子を無気力にさせるのは、慎重になったほうがいいですよ。」と言った。

「息子の集中力のなさは何年も前から指摘されていました。セラピーにも通いましたが効果はありませんでした。私たちは転校させることも考えていますが、学校を代わったところで結局は同じことの繰り返しだと思います。」と私が切り出すと、校長は「学校を代わる必要はないと思います。今日はその話し合いのために来てもらったわけではないのですよ。いろいろな先生にも聞きましたが、みんな口を揃えて「やればできる子だから、ギムナジウムを卒業できるはずだ。」と言ってましたよ。」と言ってくれた。横で聞いていたニコちゃんはものすごく喜んでいた。
校長は「でも君の今回の成績はあまりよくないね。」と言った。ニコちゃんは「でも5はなかったですよ。」と自慢げに言った。それは何の自慢にもならないのに・・・

校長からの手紙はかなり厳しい内容だったので、どんな話し合いになるのかすごく気が重かった。
しかし、校長は終始穏やかで、ニコちゃんのやる気を引き出すように話しかけてくれ。

「放課後、Hausaufgabenbetreuung(宿題をみてくれる)でニコが指導員を侮辱したと手紙に書かれていましたが、具体的にはどういうことか教えて欲しい。」と聞いてみた。
校長は「Hausaufgabenbetreuungは優秀な上級生が下級生の宿題の面倒を見てくれるところです(無料で利用できるが、上級生はボランティアではなく、学校からバイト代がもらえる)。宿題を頻繁に忘れてくる生徒は強制的に参加を義務付けられていますが、その他の生徒は参加してもしなくても本人の自由です。ニコは参加しても全く宿題をせず、友人とつるんでふざけてばかり。上級生に対する尊敬の念がまったくなく、全然言うことを聞かないので、上級生からクレームがきました。Hausaufgabenbetreuungは、わからないところは教えてもらえるし、学校で宿題をすませてしまうことができるので、素晴らしいシステムだと思います。上手に利用してもらいたいけど、あまりにもひどければ出入り禁止になってしまいます。」と説明してくれた。ニコちゃんはHausaufgabenbetreuungに強制参加組だったのだが、手紙が来てから「怒られるぐらいなら、行きたくない」と言って、行っていない。「ニコは出入り禁止ですか?」と聞いたら、「そんなことはないですよ。ただ教えてくれる上級生は先生と一緒なのですから、もっとリスペクトしないといけないよ。」とニコに諭した。

「それともう一つ君にいいたいのは、言葉遣いが悪すぎる。汚い罵り言葉を私はこの学校内で聞きたくはない。絶対に使ってはいけない。」と強い口調で言った。

最後にニコちゃんは「えっと、僕より成績が悪い子はいますか?」と聞いた。恥ずかしい質問だと思った。校長は「君が最下位というわけではない。」と言った。続けて「次はもう少し頑張って3と2ばかりの成績表になるようにしてみようよ。君だって4や5は取りたくないでしょ?今は一番悪い成績は4-だけど、一番悪い成績でも3になるようにしてみようよ。それを続けていればいつかは1も取れるようになるよ。」とニコちゃんを励ました。私に対しては「こういう子供には忍耐強く付き合うことが必要です。時間がとてもかかります。絶対にあきらめてはいけないのです。あきらめたらそこでおしまいです。」と言った。見透かされている気がした。

私達の話し合いは17時から始まって45分ほどかかった。校長室を出たら、次の親子が入ってきた。校長先生も忙しいなーと思った。ドイツの先生は残業なんてしないで、自分の受け持ちの授業が終わったらさっさと家に帰ってしまうイメージがあったが、この校長先生は親身だなーと思った。よくない評判ばかり聞くのだが、私にはとてもいい校長に思えた。この人が校長なら、この学校にニコちゃんがいることは正解なのかなという気もしてきた。

校長は終始「君はやればできるんだよ。忘れ物をなくすために、チェックリストを作ったらいいと思うよ。君は優しくていい子だと担任が言ってたよ。もう少し順序立てて物事を考えようね。宿題は大切だから必ずするようにね。テスト勉強もそうだよ。私に言わせればテスト勉強をしない子は馬鹿だと思うよ。テストは親に見せないといけないよ。いいね、できるよね?」という感じで、ポジティブな言葉を沢山投げかけてくれた。

ニコちゃんは、私や夫が何を言ってもすぐに泣きわめくが、校長の話しはちゃんとおとなしく聞いていたし、質問されたことには真面目に答えることができた。
しかし、私と二人きりになると、その魔法はとけてしまう。魔法を持続させるために私は薬を選びたい気持ちが日に日に高まる。一方、夫は一旦はやむ無しと考えを変えたが、最近はまた懐疑的になってきている。ニコちゃん本人は薬は絶対にやだと言っている。本当に難しい問題だ。





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最終更新日  2018年01月30日 14時51分51秒
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