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「紀子さん、何かあったんですか?」
江利は紀子の家では、いつも台所で話す。 この日もいつもの椅子に座って、紀子が出してくれたお茶を飲みながら聞いた。 紀子はきょとんとした顔をし、 「何が?」 と言った。 「あ、いえ・・・・、ちょっと紀子さんの服装がいつもと違うので・・・・・。」 「ああ、このエプロン姿のこと? 失礼しちゃうわね、私だってエプロンして台所の掃除くら いするわよ。」 紀子は笑顔になり、 「でも、台所ってなかなかきれいにならないね・・・。まあ、普段さぼっているから、当たり 前なんだけれどね。家事優等生の江利さんには考えられないことだね。」 と言った。 「そんなことはないです。私の家は物がないので、散らかりようがないんです。」 「まあ、家事も才能だからね・・・・。私はダメだわ~~。」 「紀子さんは家事より自分の仕事をバリバリする人だと思っているので、今日のエプロン姿が 意外でした。失礼しました。」 江利はいつものように、自分が思ったことをそのまま言ったのだ。しかし、江利のその言葉 を聞いたとたん、紀子の様子が変わった。体の力が一気に抜けてしまったように、江利には 思えた。 紀子はしばらく黙っていたが、お茶を一口飲むと、 「そうなのよね・・・・。そうだったんだけれどね~~~。」 紀子はそう言うと、また黙った。 江利はその様子に戸惑い、黙ったまま紀子を見る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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