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カテゴリ:マンガ
『御用牙』というマンガをご存知だろうか?
青年劇画誌創刊ラッシュの昭和42年から劇画雑誌を支えてきた『ヤングコミック』に連載されたマンガだ。 原作はさいとうプロを辞めたばかりの小池一雄(夫)、劇画は同じく神田たけ志。 同時期の掲載マンガだとか、編集方針だとかを書き始めるとキリがないので、有り体な言葉だが、青年雑誌を今の形にした伝説の雑誌と思っておけばいい。 現在発行されているのは、まぁ、幻だろう。 詳しくは、岡崎英生『劇画狂時代』参照。 同時期の上村一夫、宮谷一彦、真崎守が「政治の時代」をモロに描いていたのに比べると、エンタメ路線で、(あくまでヤンコミとしては)異質なカンジを否めない。 とはいえ、読んでみると意外なほど面白い。 前半は町方同心として、江戸の治安を守り、庶民を助ける十手者の大義王道を歩もうと、権力構造を超越して、縦横無尽に駆け巡る。 大奥、老中はもとより、商人も吉原も、非人だって味方だぜ。 ここまでで、既に分かると思うが、俗に言う借景小説である。 一巻から↓なシーンが。 手首が飛ぶのはいいとして?、後のほうで、カツラが飛んでいる。 変なシーンだ。 この後には“かみそり”半蔵の強さの証明として、庭で地蔵をメリケンサック(あられ鉄拳)でぶん殴る訓練シーンも出てくる。 針状の突起を有するので、これで撲殺することも可能だ! そんなこんなで、四六時中叫びまくっている半蔵なのだが、この物語が10巻にして一転。 カミソリよりも恐ろしい、あの鳥居耀蔵と対決。 「妖怪」である。 カミソリより強いので、これくらいのキックは当たり前。 石の燈篭を手刀で真っ二つにし、目をついては抉り出し、心臓を手刀で穿つ。長脇差(ドス)程度では到底勝ち目がないのだ。 もちろん、妖怪と呼ばれるほどであるから、陰湿極まりない。 半蔵を牢に入れての攻防戦は、『柳生忍法帖』の花地獄並に白熱する。ここは息詰まる展開で、一気に読んでしまった。 とにもかくにも、ここが一番盛り上がる。 この後、遠山の金さんと手を組み、新たな大義王道を掲げて話は上方で展開するが、方法論が変わっただけで、序盤の焼き回しの感は否めない。 まぁ、ここは当初から、鳥居戦を経ての、大義王道の変節を見るのが正しいのだろう。 そこそこのデキかな。 もともと映画版の『御用牙』を観るために、もののついでに大人買いしたものだが、対決編だけでも、買ったかいはあったと言える。 全18巻。 この機会を逃せば、『大菩薩峠』の如く、読まずに終わってしまっただろうと思うと、感慨深い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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