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車筆太

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2006年07月16日
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 さて、まずは時系列に沿って、現在の和製ホラーの源流と言われる『邪願霊』からとも思ったのだが、手持ちのVHSが行方不明(ダンボールのどっかだとは思う)なのと、未見の作品を観ることが今回の目的なので、総論は後回しとの観点から、見送り。

 とはいえ、『女優霊』『リング』はもう一度観ておきたいなと思ったのだが、夏前だからか、考えることは同じようで、レンタル中。
 仕方がないので、早速、未見の作品からです。

 まずは、『心霊ミステリーファイル 呪霊』。
 2000年の作品で、監督の秋山豊はフィルモグラフィーを見ると、エロVシネマなんかを撮っている人(『けっこう仮面2』とか)で、ホラーでは『真・累が淵』を撮っているらしい。
 安っぽそうなSF『200X年 翔』の監督でもあるんだねぇ。

 まぁ、要するに、全く知らない人物なんだが、出演者も見たこともない人達ばかり。
 物語の方も、間延びした演出のダメさかげんと、意志を感じないヘタクソな編集、加えて、出演者の演技の不味さに、セリフまわしのセンスのなさが光る。
 収録作品の「車」「メール」「ホテル」「蛇のたたり」「血縁」と全てがゴミ。心霊特番の再現VTRよりもはるかに程度が落ちる。
 お蔵入りされていたというのも頷けるようなデキなのだが、実はこのどうしようもないクズ加減がポイント。
 
 本作の冒頭で語られるのは、収録されている諸作品は、「本物の霊」が映ってしまったためにお蔵入りになっていたということである。
 つまり、小池壮彦が指摘したような、「お蔵入りになった<心霊ビデオ>の存在を語る都市伝説」というレトリックがあり、80年代末期の「<本物>は常に隠蔽されるという物語」のリバイバルと言える。
 
 丁度この少し前に、ジャン・ハロルド・ブルンヴァンの『消えるヒッチハイカー』が翻訳され、今ではすっかり定着した感のある「都市伝説」という概念が、アメリカの民俗学と供に紹介された。
 民俗学から見ると、この辺りの議論は煩雑になるので、ここでは触れないが、この種の怪談が「都市伝説」のフレームを介して、常に外に存在する「真実」を語ろうとする試みによって、幽霊の真実味を増大する方法論をとったことは確かである。
 
 この方法論は、複製技術時代の心霊写真(浅羽通明)にあっても、「これはニセモノだが本物は」という理論で、幽霊が写るという「事実」に生命を与えた。
 反面、「さらに」その先にある真実を常に追究する無限の連鎖を生む結果となった。
 フランスのラカン派マルクス主義者スラヴォイ・ジジェクの『幻想の感染』を用いながらやると面白そうなテーマだが、ここでは本筋からズレるのでやらない。
 
 さてさて、唯一、80年代末期の怪談のレトリックのリバイバルと言える本作を評価できるのは、そこに幽霊が映っていると提示することで、意識は作品そのものから、「写っている」とされる幽霊に移動する。
 ポストモダンの心霊写真は、写真の中に幽霊を発見する方法論をとったことで、写真を提示された瞬間に幽霊の姿を探し出すという行動を誘発することになった。
 同じ理由により、本作では、どこに幽霊が映っているのかに注意を向けさせることに成功したと言える。
 
 少なくとも、最後から2つ目まで位は真剣に観てましたよw
 後半、答え合わせ的に出てくる幽霊の姿はともかく(!)、怪談映画を魅せる方法論としては、なかなか面白いんじゃないだろうか。
 ゴミ映像の再生産という意味でも有意義なんだろうなと。
 
 よくできた物語ではダメなのだ。
 観る価値のないクズのような物語だからこそ、「観る」という行為に意味が生まれてくるのである。
 まさに、コペルニクス的転回。
 問題は、これを狙ってやったのか、どうなのかと。どちらにしても、評価は変えませんけれどね。
 
     心霊ミステリーファイル 呪霊 ◆20%OFF!幻想の感染心霊写真
 





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最終更新日  2006年11月13日 00時06分24秒
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