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カテゴリ:ホラー映画、好きです。
暑い。
こんな夜はホラー映画に限る。 と、強引に導入。 1965年制作の『怪談』。 原作はもちろん、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談本。 原作を現代風にアレンジしつつ、4話完結で世界観を構築している。 オープニングからして、黒と赤と青の墨が水の中で渦巻き、これから起こる怪異を象徴するように、不吉で不穏な空気を醸し出している。 時折り挿入される水滴が水を打つような音が、不安で張り詰めた糸を弾き、緊張感を強いるのだ。 既に物語の世界にとりこまれている観客が次に観るのが、第一話「黒髪」。これが物凄く怖い。 止まっていた時間が動き出すとともに訪れる肉体の崩壊。 観念と時間と家屋と肉体とが、四散して、バリバリと音をたてて朽ちていき、裏切りものの男が逃れようと、もがけばもがくほど事態はよりさらに加速して、肉体を時間という楔で侵食していく。 ここでも、不快感と不安感を掻き立てる音楽が場を一層盛りたてる。 三国連太郎の演技も、特殊メイクと相俟って良い。 第2話、「雪女」。 ホリゾントに描かれた背景としての不気味で巨大な目は、じっと人間界を見つめる自然界の象徴。 しかし、ふとした気の迷いから美少年の仲代達也を助けてしまったことで起こる悲恋の物語。 超然とした雪女と人間としてのお雪を演じた岸恵子が素晴らしい。 この演じ分けのおかげで、人間界に染まって愛が生まれ、母性が芽生え、それが失われて訪れる結末の悲劇をより盛り上げる効果がうまく出ている。 結末では、もう一度、巨大な目が登場する。 人間界と訣別した雪女は再びその目に還っていく。 第3話、「耳無芳一の話」。 なんといっても、観るべきはそのセットの豪華絢爛さ。 後は、丹波哲郎による、声を出せない芳一の耳をもぎ取るスプラッターなシーンか。ホント、痛そうだ。 第4話、「茶碗の中」。 結末がない話が怪談の最終話。 「人の魂を飲み込むとどうなるか」を描いた幻想怪奇譚である。 次々に起こる怪異のために、次第に狂気を帯びていく武士を中村翫右衛門が好演。 笑い声を上げながらのアップは鬼気迫るものがある。 因みに、お礼参りを告げる3人の武士の1人に天本英世がいるのだが、ほとんど顔が見えないのが残念。 最後は、それまでナレーション(つまりは、この物語の作者)だった滝沢修が登場して、コレデオシマイ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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