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カテゴリ:マンガ
パパ、断腸の思い「和子、見てろよ!」
ハイ、折り返しから。 「サメだ!サメが歩いてる」「その前にチューだ」 さて、ここで本作。 魚が歩き出してホラーな目にあわされるという『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド・fish』『魚介類ミカドロイド』『最臭兵器』といえる奇想一発、ホラーの定番を利用した投げっ放しのオチ、『怪獣ギョー』のリメイク(多分)っていうのも、うーん、素晴らしい。 沖縄から飛んでくるビニール袋入りの魚だとか、徘徊するジョーズ、タコ、イカ、タツノオトシゴ、オッサンだとか、高速で走るカジキを戦車が追っかけるだとか、クルクル回る首吊り死体だとか、小さい歩行器トラップに挟まれるオジさんだとか、助手をさらって飛んでいく博士だとか、ウイルス入りのXXXを噴射する華織マシンだとか、異常描写もテンコ盛り。 それに、相変わらず台詞回しが冴えとりますな。 柄にもないSF的説明を試みたり、違和感ムンムンのサーカスが来たりとか、まぁ、もともと短編派なんでこの辺はご愛嬌かなと。 しかしながら、ホラーとしての怖いではなく、生理的な嫌悪、グロですね、これは。シャカシャカ走り回るギョとか、土左衛門な風味の人々がボーンレスハムにされたりとか、なんともね。 ところで、不条理さと奇想天外からイメージを横溢させて、一気にグイグイ進んでいくそのスタイルの延長線上に伊藤ホラーの特徴の一つがありまして、それが「笑い」なわけです。 「恐怖と笑いは紙一重」と唐沢俊一が貸本怪奇マンガを紹介した際に述べてましたが、伊藤潤二の場合は、そういった恐怖の過剰性が笑いに突き抜けてから再び恐怖に帰着する定型を踏みながら、さらに意図的にギャグに転じかねないセリフやシチュエーションをそのまま画としてマンガにしつつも、ギリギリのところでホラーにとどめる手法を用いてます。 要するに、B級ホラーの資質ということですね。 実のところ、伊藤ホラーにオチのスマートさを求めているわけではないですし、物語の整合性を求めているわけでもないんですよね。日常の中に非日常をブチ込む奇想、異世界を創造するイメージ、ヴィジュアル的想像力、そして予定不調和な展開を愉しめばいいと。 マッチョな隣のお兄さんが墓石で筋トレしていてもいいんです。化け物じみた容貌のモデルがやっぱり化け物でもいいんです。 ホラーの範疇でどこまでも踏み外していくその卓抜した手法を愉しめばいいんです。 「ひきずり兄弟」「双一」のようなホラーコメディは伊藤のメタ・ホラー的な資質を良くあらわしていると思います。 さて、もう一つ伊藤潤二ホラーを彩る特色として、「女性」があります。が、長くなりすぎたんでまた別の機会に。短編もまた違った視点からみることができるんだけど、これもまた今度だな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年02月28日 01時26分21秒
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