テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
大崎下島の御手洗を散策し、岡村島で泊る。 私の好きなツーリングコースの一つである。
日曜日の朝、昨日の強風は治まった。 今日はどこへ行こうか? 天気予報では、明日も天気が良く波も低い予想。 うん、久し振りに、愛媛県にある『お気に入りの岡村島』に行ってみるか! *** 朝10時。 シーカヤックが盛んで、瀬戸内カヤック横断隊も毎年お世話になっている、上蒲刈島の県民の浜を出発。 今日は暖かくてグローブも要らないほど。 風もなく、美しい瀬戸内の景色が堪能できる。 今年の冬は暖かくて天気も安定しており、オープンカー乗り&シーカヤッカーにとっては、恵みの冬である。 豊島を越え、大崎下島の南岸に沿って漕ぎ進む。 ここは西寄りの風が吹くと酷く荒れる場所で、第一回目の瀬戸内カヤック横断隊の時は、冷や汗モノだったことを思い出す。 ちょうど潮止まりでもあり、『インチューンパドル』のキャッチの良さもあって、快調に進んで行く。 昨年末から順調に漕げているため、冬にしては体が漕ぎモードになっているようだ。 県民の浜を出てちょうど1時間30分で、御手洗に到着した。 実漕ぎ距離で約13kmを、休憩無しの一気漕ぎ。 時速を計算すると、8.6km/hと、なかなか良いペース。 いつもの浜にカヤックを揚げ、御手洗の町を散策する。 ここは、北前船が行き交っていた頃、風待ち、潮待ちの湊として栄えた町で、今でも昔ながらの町並みが保存されている。 3連休の中日なのだが、残念ながら観光客は少ない。 ここに来るといつも寄る食堂に行ってみると、なんとお休み。 うーん、日曜日は休みなのか。 開いている食堂がないか聞こうと、観光協会のある『潮待ち館』へ。 『すみませーん、どこか開いている食堂はないですかねえ?』 『ここら辺の食堂は、日曜日は休みなのよねえ。 前の店が開いているから、もしカップ麺で良かったら買ってくれば、お湯は準備できますよ』 『そうですか。 じゃあ、ここでお湯をもらっても良いですか?』 『いいですよ!』 *** 『ところで、今日はどこの現場ですか?』 (『現場?...』 ああそうか、坊主頭に紫色のスカノラック、どこかニッカボッカにも見える防水のパドリングパンツ、そして長靴にも見えるパドリングブーツ! たしかにどっから見ても、建設現場で働いているように見えるよな!) 『ははは。 いやあ、今日はカヌー、シーカヤックを漕いで来たんでこんな格好なんですよ。 蒲刈から漕いで来たんです』 『ああそうなんですか』 するともう一人の男性職員の方が、『御手洗には、シーカヤックの人達が年に何回かキャンプに来られますよ。 たしか呉の人達だって言ってましたよ』 『そうなんですか(安浦のクラブの人達だろうか?)』 *** 『じゃあ、ちょっと買ってきます』 すぐ前の小さな商店に行き、昼食用に どん兵衛きつねうどん を購入。 そうだ、明日の朝のうどん用に、玉子も買っておこう。 『ここは玉子はありますか?』 『あるけど、12個パックしか無いよ』 『そうですか、じゃあいいです』 『何個要るの? 一つ?』 『ええ、一つでいいんですが』 『じゃあ、うちのを分けてあげよう。 一個20円かな』 『ありがとうございます』 いいなあ、御手洗の親切な商店。 これが本当のサービスだよなあ。 『買ってきました。 お湯をいただいても良いですか』 『テーブルがあるから、奥へ入って待ってて下さい。 お湯、沸かしますから』 椅子に座っていると、お茶を出していただいた。 さらに、輪切りにした蜜柑まで。 『いろいろとすみません。 ありがとうございます』 この部屋には、御手洗に関する写真や資料が展示してある。 見ていると、観光協会の年配の男性の方が部屋に入ってきて、御手洗に関する様々な話しを聞かせていただくことができた。 *** 北前船で栄えた江戸時代の御手洗から、明治、昭和と時代が移るに連れて変化して行く町の様子。 蜜柑栽培が盛んになる前は、山に桃の木が多くあり、花がきれいだったそうだ。 また、海岸沿いの道も、昔は松が植わっていて、白砂青松の風情のある通りだったとか。 当時、果物の種類が少なく、蜜柑は貴重品でとても高価だった。 そう、昔はバナナが貴重品で、病気の時しか食べさせてもらえなかったのに似ている。 蜜柑箱一箱を今治に持って行けば、大人数人が一晩どんちゃん騒ぎできたそうだ。 また、密柑山で子供が蜜柑をもいで食べていると、親達は、『小遣いやるから、蜜柑食べんとってくれ』と言ったくらい蜜柑が高かった。 そして、2006年に御手洗でロケがあったという映画、『旅の贈りもの』のロケの様子。 御手洗は、以前、『悪霊島』でもロケがあったそうだ。 そのうち、奥さんだと言う観光協会の女性職員の方も一緒に、様々な話しで盛り上がる。 本業は、海運業だそうだが、町おこしをやりたくて夫婦で観光協会の仕事もされているとの事。 スゴイ。 現在工事中の豊島大橋が完成すれば、本土と地続きになるため、観光を軸にした町起こしにも力を入れておられるとの事。 観光協会が中心となって地元ならではのお土産品の開発に取り組んでおり、食堂/レストランを建設中で、できることならホテルも誘致したいと言っておられた。 有名なコンサルや、呉の市長とも話しをしておられるそうなので、これからの御手洗に期待したい。 『せっかくこれだけの資産が残っているんですから、もっと観光客の人に来て欲しいですよねえ。 町おこし、すごく楽しみにしていますよ!』 *** 私の方も、シーカヤックを使った、尺取り虫方式での瀬戸内横断から、それに続いて下関から日本海北上の旅を続けている事。 また、そのルートが、昔の北前船の辿ったルートに近いため、勝手に『北前船を辿る旅』と称して海旅を楽しんでいる事もお話しする。 『いいですねえ。 ところで北前船といえば、おもしろいプランがあるんですよ!』 『どんなプランなんですか?』 『船に地元の特産品を積んで北前船のルートを辿っていくの。 そして着いた港でそれを売って、またその地元の特産品を仕入れて次の港へ。 それを繰り返しながら旅をしようと言う計画なの』 『えー、それは良いじゃないですか! ぜひやって下さいよ!』 『おもしろいでしょう。 そんな話しで盛り上がって、主人が町おこしに嵌まっちゃって』 『いいご主人じゃあないですか』 *** 『それにしても、高校生と中学生の子供さんが居るようには見えませんねえ』と奥さん。 『え、そうですか(それって、若く見えるってことかな? ふむふむ)』 『高校生くらいのお子さんが居るって言うと、会社でしっかり仕事をして、落ち着いたイメージがありますよねえ』 (え、そういうことか。 これでも平日はちゃんと仕事してるつもりなんだけどなあ。 やっぱり私には、落ち着いた大人の雰囲気がないってことだな。 がーん) 『ほんと、若く見えますよねえ』 (なーんて、今さらフォローされても...) 『ははは。 そうですかねえ』 *** 観光協会で印刷、製本したという、『瀬戸内 【御手洗】の町並み』という御手洗の歴史が書かれた貴重な冊子を購入し、『いやあ、本当にいろいろとお世話になりました。 楽しい話しも聞かせていただいたし』 『また是非寄って下さいね』 うん、本当にいい人達だ。 がんばれ御手洗! 応援しています。 *** 浜を出て、目の前に見えている岡村島へ。 ほんの10分足らずのパドリング。 フネを揚げると、いつものようにテントを張り、着替えて準備完了。 ようし、ビールの買い出しに行くか。 *** 御手洗での思わぬ出会いから始まった、『あるく、みる、きく_旅するシーカヤック』はじまりの予感! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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