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土曜日の朝、次男に手伝ってもらってシーカヤックのタンデム艇をカートップ。 今日は久し振りに、妻と日帰りツーリングに行こうと思っている。
*** 家を出る頃になると、外に掛けてある風鈴がチリンチリンと鳴り始めた。 どうやら少し風が出てきたようだ。 まあ、海に行って様子を見てから、出るかでないか決めようということで、とりあえず出発。 海沿いの道を走って行くと、竹林はザワザワと騒がしく、宣伝のための幟もバタバタと元気良く”はためいて”いる。 海は白波が立ち、ちょっとした春の嵐だ。 *** 『ようし、今日はカヤックは中止して、ドライブにしよう! 美味いもの食って、温泉入って帰ろうや』 『そうそう、せっかくだから前から行きたいと思っていた所に行ってみようよ』 倉橋島の海沿いをのんびりとドライブ。 鹿老渡を越え、鹿島大橋を渡り、鹿島に入る。 少し走ると、行き止まりになった。 え? 海から見た時には、広そうな道があったんだけどなあ。 そこまで続いていないんだ。 クルマを停め、歩いてみる事にした。 *** 島に多い、狭い通りを歩いていると、少し離れた高い通りをおばさんが歩いてきた。 『こんにちは。 この近くで、段々畑がきれいな所があると思うんですが、どっちに行ったら良いですか?』 『ああ、それは、その道をそのまままっすぐ行ったらええよ』 『ありがとうございます』 少し歩くと、海沿いの道に出た。 ああ、これこれ。 シーカヤックで海から見た事のある景色だ! そう、有名な『鹿島の段々畑』 江戸時代から人が住むようになり、北前船が行き交うようになると、交通の要所の一つとして、この鹿島や海老渡も栄えたという。 そこに住む人達が、海の石をひとつひとつ、自分たちの体で背負って運び、築き上げたこの段々畑。 下から見ると、畑には見えない。 南向きの斜面で太陽の光に照らされ、まるでお城や豪邸の石垣のように光り輝いている。 この立派な段々畑を目の前にすると、ただただ、昔の人達の忍耐強さと勤勉さに敬服するほかない。 『すごいねえ。 いったい何年、いや何十年掛かったんだろうか?』 『はじめて見たけど、これはすごいねえ』 『いやあ、やっぱり来て良かった!』 再び集落の狭い通りを歩いてクルマに戻る。 途中で、別の方向の畑から降りてきたおじさんとすれ違う。 『こんにちは。 ここの段々畑はすごいですねえ』 『あっちへ行って見た?』 『ええ、さっき向こうの段々畑を見てきたんです』 『わしらは毎日みよるけん、珍しゅうもないけどのう』 『それはそうですよねえ。 いやあ、でも本当に良いですよ』 『おじさんも石を運んだりしてるんですか?』 『いやあ、わしはもう石を運んだりしよらんよ。 崩れたら崩れたでそのままにしとる』 『やっぱり若い人が居ないんですか?』 『ここらじゃあ、一番若いのでも40歳くらいかのう。 若いもんがやらんから、どんどん変わって行きよるわ』 『じゃあ、もう100年もしたらこの段々畑も見れんようになりますかねえ?』『いやいや、100年どころか、10年もしたら無くなるかも知れんよ。 向こうの畑は、70過ぎのじいさんが手入れしよるんじゃ。 あと20年ゆうたら90歳じゃけんのう』 (ここの段々畑も、タイムリミットギリギリかもしれない!) 『あの向こうにあった青い屋根の小屋は何ですか?』 『あれは、いわし、いりこを作る所』 『ああ、いわしの子をゆでて干す所ですね』 『そうそう』 『いつ頃がシーズンですか?』 『6月くらいからかのう』 『じゃあ、そのころは忙しく、賑やかになるんですね』 *** 『ここらは猪が畑を荒らしよるんじゃ』 『やっぱり出るんですか』 『出る出る。 この畑の柵も飛び越えて荒らしよるし、中には人の家に入って残飯を食べるのも居る』 『ここらの猪は、「こんにちは!」いうて一人暮らしの人の家に入ってご飯を勝手に食べよるんじゃ』と、おじさんは笑っていた。 *** クルマに戻り、再び鹿島大橋を渡って、桂浜温泉館の近くの食堂へ。 ここでは、妻は『カキうどん』を、私は『牡蠣丼』を注文。 取り皿をもらい、カキうどんと牡蠣丼を分け合って食べる。 どちらも大きなプリプリの牡蠣がたっぷりと入っていて大満足! *** 食後は、桂浜温泉館へ。 今日は珍しく、大きな浴槽が『みかん風呂』だった。 ミカン風呂、露天風呂、サウナ、そして再び露天風呂。 たっぷり一時間風呂につかって、日頃の疲れを癒した。 風が強くて海には出られなかったのは残念だけれど、一度訪れてみたいと思っていた鹿島の段々畑を妻と一緒に見る事ができ、おいしい牡蠣料理と温泉を堪能する事ができた休日ドライブ。 楽しかったなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 24, 2007 07:56:53 PM
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