テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
『鯛の里』の新鮮でおいしい魚料理とお酒を堪能した翌朝、朝食を摂りながら、なぜだか再び盛り上がる。
お互いの笑いのツボにバッチリと入る、ここでは書けないオフレコのおもしろおかしい話しが次から次へと飛び出し、思わず食後のコーヒーを吹き出しそうになるほど! なぜだかこのメンバ-だと、いつも宴会の翌朝に不思議な盛り上がりがあるのだ。 朝から酒を飲んでいる訳でもないし、これは一体、なんなのだろうか? あー、それにしても笑った笑った! *** <今回掲載した写真の何枚かは、エクストリームNさん撮影> 9時からは、近くに有る『泊清寺』の新山住職にお会いすることになっている。 うん、実に良い雰囲気のお寺だ。 奥に通され、挨拶を交わし、エルコヨーテさんから、今日ここに伺った用件である『ホクレア号』の準備状況や、ナイノアに強い影響を与えたと言う『カワノヨシオ』氏の手掛かりを探していることを説明する。 寺には過去帳という貴重な記録も残っており、この調査にも協力していただけることになった。 その後は、このお寺ともゆかりのある宮本常一氏の話しや、このお寺が中心となって大正3年から昭和15年まで発行されていた『かむろ』の事、沖家室から対馬や朝鮮半島まで出漁していた漁師さん達の話題で盛り上がる。 この『かむろ』は、今では復刻版も本になっており、私もその第一巻を入手して読んでいるのだが、当時の沖家室島の人々のグローバルな視点、島の発展を願う熱い想いなどが伝わってくる。 (今回は、この『かむろ 復刻版』を泊清寺に持参し、新山住職にサインしていただいた。 これは、良い記念になったなあ!) インターネットはもちろん、国際電話も通じていないあの時代に、世界に飛び出していった沖家室島の人々と島に残った人々の心をつなぐ貴重なネットワークを形成する核となっていた、タウン誌の元祖とも言える貴重なメディアなのだ。 その『かむろ』に関わった人々の熱意、コンセプトの先進性、投稿している人々のグローバルかつ高い視点には、ただただ驚くばかりである。 *** 用件が終わった後、お礼を述べて辞そうとすると、本堂に案内された。 ここの本堂は、『長州大工』作の見事な造り。 新山住職も、各地で長州大工の残した建築物を見られたそうだが、この寺が一番だと言っておられた。 たしかに見事である。 その新山住職から、昨年行われた開島400年記念行事の事や、今準備している塔婆の事、昔の寺の様子などなど、興味深いお話を伺う。 沖家室島では、海外に移民して行った人が多く、かなり古くからテレビや蛍光灯があったことは有名なのだが、このお寺でも、当時の朝食はパンとコーヒーが当たり前だったそうだ。 その頃、島の狭い通りの朝は、パーコレータでいれるコーヒーの香りが至る所で漂っていたと、鯛の里の松本さんも言っておられた。 また、昔は寺が子供の遊び場であり、雨が降ると本堂で遊んでいたので、『長州大工』の作である龍の飾りのヒゲの先端が欠けているのも、子供が遊んでいて壊したものだとの事。 この泊清寺には、そんな島の人々の生活の思い出や、貴重な歴史が詰まっている。 このお寺で過ごした時間は、本当に良い時間だった、来て良かった。 ありがとうございました。 *** 再び『鯛の里』に戻り、今度は松本さんに、沖家室の町のガイドをしていただく。 最盛期には、なんと4000人ほどの人が住んでいたと言うこの沖家室島。 ここで生まれ育った松本さんの案内で、昔のメインストリートを散策する。 居酒屋、下駄屋、かむろ針の製造所。 銭湯、商店、パン屋さん。 郵便局、絵を収めていた蔵、地元の名家。 今でこそ空き家がほとんどだが、松本さんの話しを伺っていると、当時の賑やかだった沖家室の雰囲気が伝わってくる。 ↑ 『かむろ針』を入れていた貴重な箪笥 以前、シーカヤックのツーリングで来た時にも、同じ通りを散策したのだが、何も知らなかったので『古い町並みが残っているなあ』といった感想を持っただけで通り過ぎてしまっていた。 やはり地元の人に話しを聞くと、同じ景色でも全く違って見えるものだ。 『あるく、みる、きく』は、旅の楽しみを倍加してくれる。 沖では『兔が跳ぶ』ほどの強風かつ寒い中を案内していただいた松本さん、本当にありがとうございました。 *** 周防大島と沖家室島を訪れた週末の旅。 新たなカヤック仲間も一緒になって沖家室島を一周したシーカヤックツーリング、良い泉質の竜崎温泉。 『鯛の里』で見た、奇遇というにもあまりにタイムリーな『ホクレア号』の番組、そして美味い魚料理と楽しい会話で盛り上がった宴会。 密度の濃い泊清寺での時間。 そして沖家室島の歴史をたどった島の散策。 この週末も、本当に充実した週末であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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