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『長い航海の意義は、島に到着するという結果にあるのではなく、島にたどり着くまでの長い航海、その道のりにあるのです(ホクレア号が行く、ブロンズ新社)』
星の航海師、ナイノア・トンプソンのこの言葉を、ここ数年のシーカヤックを軸とした私自身のライフスタイル/旅のスタイルの変化、そして最近の様々な旅先での出会いと照らし合わせながら、じっくりと噛みしめている。 *** 土曜日の朝。 予報通り雨が降っている。 今日は、先週見つけた『ホクレア号』に関するイベントに、妻と一緒に行ってみる事にした。 そのイベントとは、広島市こども文化科学館のプラネタリウムの春の番組、『星は灯台!? ホクレア号の挑戦』である。 *** プログラムが始まる前、説明員の方が、ホクレア号がハワイを出て日本に向っている事、広島は寄港地の一つに予定されている事に加えて、昨日金曜日の新聞にホクレア号の記事が載っていた事に触れられた。 この記事とは、『瀬戸内カヤック横断隊』の隊長でもある海洋ジャーナリスト、内田正洋さんが、『ヤポネシアの海を旅する』というタイトルで、毎週金曜日に中国新聞の”くらし欄”に連載されている記事の事である。 *** 照明が落とされ、番組が始まった。 ホクレア号が建造された経緯、サタワルの航海師を招いて成功させたハワイータヒチの航海、そして、まさにプラネタリウムでホクレア号を紹介するのにピッタリのテーマ、『スターナビゲーション』の考え方。 様々なキーワードも、要所要所にちりばめられていた。 1975年、ミクロネシアのサタワル島から沖縄海洋博会場まで、3000キロの海を渡ってきたカヌー『チェチェメニ号』 カヌーの原木を贈ってくれたクリンギット族の人々の精神、『与えることこそが富である』 航海師が、島々の位置とそこにたどり着くための目印を暗号として埋め込み、連綿と伝えていた『星の歌』 そして、ナイノアがプラネタリウムでの研究を通じて考案したという『対の星』 約50分の番組が終わる。 うん、これは良いプログラムだ。 *** 館内が明るくなると、制御盤の所に居られた説明員の方の所へ。 『こんにちは、いい番組でしたね。 これは、ここのオリジナルですか?』 『ええ、そうです』 私から、冒頭の説明で触れられていた新聞の記事を書いている内田さんには、第一回目から参加させていただいている『瀬戸内カヤック横断隊』でお世話になっていること、 また先日は、番組内でも紹介されていたナイノアに大きな影響を与えたという『カワノヨシオ』さんの情報を求めて、山口のエルコヨーテさんに同行し、『沖家室島の泊清寺』を訪ねたことなどをお話しする。 その学芸員の方も関心を持っていただいたようで、別室に案内され、名刺を交換し、妻も同席してお話させていただくことに。 ホクレア号の事を知り、絶版になっている『星の航海師(幻冬社)』を図書館で読まれたそうだ。 その後も、何冊かの本を調べ、関係者に話しを聞いて、このオリジナルプログラムの企画を立案され、様々な方々から資料の提供を受けて完成したのだとか。 この人もスゴイなあ。 話しはどんどん広がって行く。 ホクレア号に関わっている人々の事、沖縄のサバニの事。 瀬戸内の島々を巡るシーカヤックの旅と、そこで出会った漁師さん達のこと。 沖家室や三原、豊島などの漁師さん達が、手漕ぎや帆走の時代から、遠く対馬や朝鮮半島まで出漁に行っていたことの凄さや、現代に残る海洋民として最近注目している、呉市にある豊島の『家船(えぶね)』の事などなど。 話しは尽きないが、そろそろ辞する事にしよう。 短いけれども、楽しく充実した一時であった。 『ありがとうございました。 これを機会に、今後ともよろしくお願いします。 もし興味があれば、是非今度、シーカヤックを一緒に漕ぎましょう!』 思いがけない出会い。 沖家室島の泊清寺につづく、『ホクレア号』が結ぶ人との縁。 *** 先日、内田隊長から頂いたメールに返信した文面の一部。 ホクレア号の件では、先々週末にカヤックツーリングも兼ねて沖家室島を訪問し、エルコヨーテさんに同行して泊清寺の新山住職にお目にかかる機会を得るなど、ホクレア号を軸にしてネットワークが広がりつつあるのを感じています。 ホクレア号がハワイを出発し、日本に向っているという時点で、海や海洋民俗、海洋文化に関心を持っている人々に、本質的な影響を与え始めているのですね。 日本に向っているという事実だけで、すでに人々に良い影響を与えていること自体に、ホクレア号の意味があるのだと実感しています。 *** 『長い航海の意義は、島に到着するという結果にあるのではなく、島にたどり着くまでの長い航海、その道のりにあるのです』 このナイノアの言葉が、じわりと心にしみ込み、自分の中の何かを変えていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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