テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
現代の日本に残る海の民、『家船』の島、豊島。 午前中は、家船調査の過程で知り合った島の方にクルマで島内を案内していただいた。 ありがとうございました。
さて、昼からは一人で『あるくみるきく』だ。 その前に、まずは昼ご飯にしよう! 通りがかりの島のおばさんに教えてもらったのは、島のお好み焼き屋さん、『マリちゃん』 店に入ると、鉄板の上は、お好み焼き、お好み焼き、お好み焼き。。。 昼前の時間とは言え、ものスゴイ数のお好み焼きが作られている! マリさんは、二人の従業員のおばさんにテキパキと指示をしながら、次から次へとお好み焼きを焼き上げ、休む事無く次のお好み焼きの準備に取り掛かる。 見ているだけでも気持ち良い手際の良さだ。 『すみません、ここで食べられますか?』 『今、忙しいから少し待っといて』 『はーい』 椅子に腰掛け、お好み焼きを焼く作業と、まるで掛け合い漫才のような賑やかな店内のやり取りを楽しみながら眺める。 しばらくすると、漁師さんらしい、日に焼けたおじさんもやって来た。 軽く会釈し、二人ともその店内の光景をニヤニヤしながら見ている。 *** そのうちに、そのおじさんと言葉を交わすようになった。 『漁師さんですか?』 『そうよ』 『今日はお休みですか?』 その方によると、日曜日と祭日は市場が休みになるため、その前日である土曜日と祭日の前の日は、漁はお休みだそうだ。 その他、月に2回ほどは水曜日に市場が休みになるので、火曜日が休みになる日も有るのだとか。 『今日はこの本を読んで豊島に来てみたんです。 やっぱり家船に乗っておられるんですか?』 『そう、家船』 『大分や対馬、五島の方まで行く事が有ると聞いてるんですが』 『昔は大分や宮崎、鹿児島の方まで行きよった。 鹿児島は、あまり釣れんかったからすぐに帰って来たがのう。 対馬も行った事が有る。 やっぱり内海より外海の方が魚が多いけえ。 最近は、安居島へ日帰りがほとんどじゃ』 『じゃあ、最近は船で寝る事はないんですね?』 『いや、たまにあるよ。 四国の方へ行って、泊って漁をして帰る事もあるし』 *** そのうち、持ち帰り用のお好み焼き作りが一段落し、ようやく私の注文を取ってもらえた。 『にいちゃん、どっから来たんね』 『近いんですよ、呉からです。 今日は、この本を読んで来たんですよ』 『ああ、その先生はよう知っとる。 その本に私の名前も出とったじゃろ』 『え、そうなんですか』 『よう読まんとだめじゃない』 『すみません。。。 (本をパラパラとめくり) あ! ここに出ていますねえ』 『そうそう、そうよ。 その金先生はこの島に住んで熱心に調べよったんよ。 ええ人じゃったよ』 お話を伺うと、今でも手紙のやり取りがあるそうだ。 午前中に案内していただいた島の方も、金さんとは一緒に飲んだ事が有るといっておられた。 『家船の民俗誌』の著者、金柄徹さんは、しっかりと豊島に溶け込んでフィールドワークをされていたんだなあ。 *** おいしいお好み焼きを食べ、会話を楽しんだ昼のひととき。 『ごちそうさまでした』 『にいちゃん、またきんさいよ』 『ええ、ぜひまた今度、食べに来ます!』 瀬戸内の島に多い、狭く曲がりくねった、まるで迷路のような路地を、風の吹くまま気の向くまま、行き当たりばったりで歩いていく。 海沿いの通りに出ると、漁師さんたちが、あちらこちらで数人かたまりになり、仕掛けの手入れをしながら話しをしている。 漁師さん達に挨拶をしたり、話し掛けたりしてみるのだが、なんだか話しがつながっていかない。 *** まあいいか。 島の方と知り合いになったし、お好み焼きのマリちゃんも知った事だし。 見知らぬ怪しげな人間が来てるんだもの、これが普通だよな。 昼からは、『あるく、みる』を楽しむ事にしよう。 ↑ 島の神社と、祭りの日時の掲示 先日、岡村島で見た『弓』を使ったお祭りもある。 ただ、岡村島では2月だったが、ここ豊島では1月だ。 他の行事も含めて、12月31日から1月6日の間に集中している。 おそらくこれは、盆と正月に一斉に帰って来る『家船』に合わせたものではないかと、勝手に推測する。 ↑ 海洋民の島では、お寺にも船が置いてある ↑ 少し遠いが、時間はたっぷりあるので、橋の上にも行って見た。 『高い所に上がってみると』、港の様子、集落の様子が良く分かる ↑ 狭い山道も、迷路のようだ。 これまた宮本常一氏の教えに従い、島の高い所へ上がってみる *** 集落の端から端まで、そして海沿いから山の上まで、『あるく、みる』をたっぷりと堪能した。 お好み焼きやさんで話しを聞かせていただいた漁師さんの後は、特に出会いもなく、昼からは『きく』はうまくいかなかったなあ。 まあ仕方ない。 やはり、宮本常一のようにはいかないよ。 でも来て良かった。 島の方と知り合いになったし、お好み焼きのマリちゃんも知った事だし。 さてさて、これから豊島の銭湯、『豊島温泉』に入ってから帰るとするか。 *** 銭湯が開くまで、もうしばらく時間が有るので、公園にいって日向ぼっこすることに。 広くて静かな海辺の公園を歩いていると、ベンチに座ったおばあさんに話し掛けられた。 <その3>へつづく! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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