テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:旅
台風4号、その名も『マンニー』が近づく中、家族4人を乗せたクルマは下関へと向う。
今日14日は、第一回国際舟文化プレサミット協賛イベントとして『海洋文化セミナー』の開催が予定されている。 しかしながら、折しも大型で強い台風『マンニー』が九州に接近中であり、来場者の方の移動中の安全を考慮して、公式行事としては中止になったらしい。 が、すでに会場には多くの学生と一般来場者が来ておられる。 講演予定者も全員そろっているし、せっかくの機会なので、既に集まっておられる方向けに、資料を公開する事になった。 *** まず始めは、南山大学教授、後藤明先生の講演。 『太平洋を旅するモンゴロイド』 オーストロネシア、環フィリピン海の概念。 ダブルアウトリガー、シングルアウトリガー、そしてダブルカヌーの分布。 沖縄の海洋文化館に展示してあるタヒチのダブルカヌーとホクレア号は、デザイナーが同じであり、同じ親から生まれた兄弟の関係にある事も紹介された。 フィリピン位まで見られるアウトリガーカヌーは、台湾から北になると見られなくなる。 日本にアウトリガーカヌーの文化が伝わって来なかった理由は、まだ解明されていないとの指摘も興味深い。 最後に、ホクレア号にまつわるムーブメントや、アミ族の竹筏レース復興、沖縄でのサバニ帆走レースなど、環太平洋の様々なところで昔の海洋文化を復興させようというルネッサンスが始まっており、私たちも『話しっぱなしにするのではなく、実践して行きたい』と結ばれた。 *** 『プルワットから見えたヤポネシア』 海洋ジャーナリストであり、私にとっては瀬戸内カヤック横断隊長でもある、内田正洋さん。 プルワットの生活と伝統的なカヌー。 島尾敏雄が提唱したという『ヤポネシア』の概念。 丸木舟の形態が船底に残る『サバニ』。 長さと幅の比率がシーカヤックに近く、スピードを重視した不安定なサバニは、漕ぐ事でアウトリガーの役割を果たしている。 日本では、『海洋芸術の世界が抜けている』という指摘。 海洋芸術の中には、GPSやコンパスを使わない、伝統的な航海術も含まれる。 GPSが安く買える時代に、なぜ今ホクレアなのか?、なぜ今、伝統航海術なのか? 我々は、それを考え、実践して行かねばならない。 *** 『星の歌に導かれて ~人類の英知を繋ぐ伝統航海術~』 グアム大学のカニンガム先生。 Pow(ポ、大航海師)とは、元々、洗練された/こなれた人というような意味があり、Powになるには、人格者であることや強い精神力に加えて、第六感も必要である。 現代の月旅行は、私たちの目に見える場所(見えている月)を目指すものだが、昔の太平洋の航海者は、『見えない島』に向っての旅であった。 そういう意味において、昔の航海はすごい冒険である。 西洋では数種類、日本では十六くらいの分類となっている月であるが、プルワットでは30の月の名前がある。 それくらい、天気をそして針路を読むために、注意深く自然を観察しているということであろう。 驚きは、大航海師である『マニーさん』がまだグアムに居た1ヶ月前から、『今回の日本滞在中に嵐がやってくるだろう』と予測していたという話し。 そしてその台風の名前が、『マンニー』と名付けられたのは、偶然だろうか? 星、島、珊瑚礁、うねり、そして鳥や魚の観察も含めた、プルワットの伝統航海術。 島までの距離を知るのに役に立つ鳥、逆に追ってはいけない鳥。 特定の地域に生息する鮫。 特定の珊瑚礁を見分けるのに、昼間は海の色の微妙な変化で、そして夜は魚を釣って、どんな魚が釣れるかで判断するというのも驚きである。 いかに自然を注意深く観察し、自分たちの役に立つ知識を時間を掛けて蓄積し、語り伝えて来たかということが分かる。 プルワットの有名な詩の中で、こう謳われているという。 『ケガをした時の血をなめてみると潮辛い、溢れる涙も、そして流れる汗も潮辛い。 私たちの中には海がある。 私たちは、まさに海そのものである!』 *** 『シーカヤックの旅 ~瀬戸内カヤック横断隊~』 今日は、隊長や他の隊員の講演を聴くのではなく、私がお話しさせていただく立場になった。 様々な経緯で、約2週間前にピンチヒッターとして決まったものだが、これも縁。 『ホクレア号を感じた責任』の一端を、この機会に果たせればいいなと思っている。 瀬戸内カヤック横断隊とは 瀬戸内カヤック横断隊のねらい なぜ瀬戸内海なのか 横断隊の旅の様子: 横断隊の朝 、 漕ぐ 、 横断隊の夜 瀬戸内カヤック横断隊から学んだ事 瀬戸内カヤック横断隊の意義 持参したiBook G4をプロジェクターにつなぎ、Keynoteで作成した、40ページほどの写真入りスライドを使って、一人のサラリーマンカヤッカーが体験し、感じ、そして自分なりに理解している横断隊の姿を紹介。 内田隊長や他の横断隊メンバー、そして妻と二人の息子達も居る中でのプレゼンテーション。 照れくさくもあるが、みんなニコニコしながら聴いてくれている。 *** 15分と短い時間ではあったが、『実践版シーカヤックアカデミー』、『スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り、という精神を理解する旅』、そして『瀬戸内ならではの海洋文化の復興、創造と継承_太平洋のカヌールネッサンスの一部になること』という、瀬戸内カヤック横断隊の意味が少しでも伝わり、関心を持っていただけたなら、うれしい限りである。 講演後、内田隊長から、『これ、いいじゃん!』とのうれしいお言葉。 そしてカニンガムさんからも、『Thank you for your exciting trip report!』とのコメントを頂いた。 カニンガムさんが来られることを知っていたので、短い貴重な時間を会場に居られる方全員と共有したいと思い、資料を英文主体の日英並記にしておいた。 つたない英文で心配だったが、どうやら理解して頂けたようだ。 良かった! *** 『古代船 海王 の挑戦』 水産大学校の下川先生の講演 大王のひつぎ実験航海の隊長を務められた下川先生から、様々な海に関わる学校の、これまた大勢の学生が関わった、興味深い人力による航海の様子が紹介され、セミナーは無事終了。 *** 片付けていると、一人の学生さんが話しかけてくれた。 講演の後、質問をしてくれた人だ。 『今日は、質問してもらってうれしかったです。 本当にありがとう』、と私。 すると、『3年なんで端艇部も実質引退で、海から離れるのがさみしいと思っていました。 今日のお話を聞いて、僕もぜひシーカヤックをやってみたくなりました!』 『シーカヤックを始めるのに、これだけは覚えておいた方が良いという、一番大切だと思われている事を教えて下さい!』 『15年前、どうしてシーカヤックに興味を持たれたんですか?』 『最初は、どんなところでカヤックの漕ぎ方を教えてもらっていたんですか?』 などなど。 楽しい一時。 今日、私がお話しした事で、少なくとも一人の方には、シーカヤックの旅に、そして瀬戸内カヤック横断隊に関心を持っていただけたようだ。 準備した甲斐があったなあ、本当にうれしい! *** じゃあ、移動しましょうか! ということで、後藤先生、カニンガムさん、内田さん、エクストリームNさん達とともに、今日の宿に移動。 さあ、これから懇親会だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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