テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
猪目海岸から日御碕まで往復した、3時間半ほどのシーカヤックソロツーリングを終え、テントを張り、浜に置かれた特製ベンチに座わる。
コバルトブルーの海を眺めながら、冷えた缶ビールとおむすびで、軽い昼食。 私にとって、こんなきれいな景色を見ながら飲むビールは最高の贅沢。 まさに至福の一時。 これ以上、何が要る? *** 午後は、地元を走る『生活バス』で出雲大社の近くまで買い出しに出掛ける予定なのだが、次のバスの時間まで、まだ1時間半ほどある。 そう、この生活バスは、一日に7便だけなのだ。 2本目の缶ビールを開け、何も考えず、ただ美しい景色と海を眺める。 さすがに昼前から海水浴客も増え始めた。 少し賑やかになった猪目海水浴場。 しばらくすると、浜の駐車場に1台のパトカーが停まった。 二人のおまわりさんが降りてきて、二手に分かれ、それぞれが浜を見回り始める。 一人のおまわりさんが、こちらに向って歩いてくる。 うーん、なんだなんだ? 職務質問か? 決して怪しくない事をアピールしようと、ニコリと笑顔で会釈する。 するとそのおまわりさんは更に近づいて来て、声を掛けられた、『すみません、地元の方ですか?』 『いいえ、違いますよ。 遊びに来てるだけです』 『そうですか。 失礼しました。 地元の監視員の方かと思ったもので』 ??? ホッとして海を眺めていると、もう一人のおまわりさんが近づいてくる。 またかよー。 今度は何だ? 『あのー、地元の方ですか?』 私は苦笑いしながら、『いいえ、違いますよ』 すると、そのおまわりさんは、『あ、監視員さんじゃないんですね』 どうやら二人とも、地元の監視員の方を探して居られるようだ。 うーん、2度も地元の監視員と間違えられるとは! 他にも人は何人も居るのに。 それだけ、この猪目海岸の雰囲気に馴染んで/溶け込んで、違和感がなかったと言うことかもしれないなあ。 *** 午後2時過ぎ。 バスの時間が近づいたので、バス停へと向う。 猪目本町から乗り込むのは、地元のおばあさんと私の二人だけ。 このバスは、海沿いの狭い道を走り、集落で3人のお客さんを降ろすと、そこからの乗客は私一人。 集落を抜けると、クネクネと七曲がりが続く、離合も難しい狭い山道を登っていく。 2速、3速ギアを使用し、25km/hほどのゆっくりとしたスピードで慎重に峠を登り、下っていく。 しばらくすると、出雲大社に到着。 海沿いの景色と森の景色が楽しめる約40分ほどのバス旅、しかも貸し切り状態で、料金はたった400円。 出雲の生活バス、これは私好みのディープなバス路線だ。 *** 大社町のスーパーで買い出しを済ませ、せっかくなので出雲蕎麦の店へ。 いつも行く店とは別の店に入り、割子蕎麦を食す。 うん、旨い。 帰りのバスの時間まで、まだ余裕があるので出雲大社に参拝。 家族の健康と、旅するシーカヤックの安全を祈願。 *** 帰りのバスは、出雲大社発。 乗客は、私以外に、地元のおばあさんと女性の方の3人だけである。 バスに乗り込むと、出発まではまだ時間がある。 運転手さんが『今日はどこまで行くの?』 『猪目本町までです。 あそこの浜にテントを張ってるんですよ。 今朝は、あの海岸からカヌーを漕いで日御碕まで往復したんですよ』 『おー、そうね』 すると、他のお客さんも、『あそこの海岸はきれいよねえ』 そしておばあさんは、『そうね、カヌーかね。 昔、うちの息子も小さいヨットを買うて、岬の方まで行きよったよ』 *** 定刻となり、バスは出発。 再び、あの狭くてクネクネと曲がった峠道を登り、そして下っていく。 ローカルバスの中で、四方山話。 地元の海や海水浴の事。 昔は、7月末に行われる地元の祭り/権現祭りが終わると、海で泳ぐ人は居なかったそうだが、今ではそんな習慣は無くなったそうだ。 そして、その昔おばあさんの息子さんが買って地元の集落の話題になったと言う小さなヨットの話し。 地元の女性が、かつて遊びに行かれたと言う、沖縄本島や石垣、伊豆諸島などのきれいな海の話し。 獲れる魚が変わってきている事や、魚の調理法について。 地元で買い出しできるお店の事。 配達してくれるお店もあること。 などなど。 おどろいた事は、おばあさんの出雲弁が、あまり聞き取れなかった事だ。 おそらく言われている事の6割くらいしか理解できなかったと思う。 単語を拾いながら意味をつなげて理解し、話しをしたのだが、まるで片言の英語で会話しているようだった。 今まで、こんなに身近に出雲弁に触れた事がなかったんだ! うん、このバスに乗って良かった。 ***(残念ながら出雲弁は再現できないが) 『あの、この道は昔からあったんですか?』 するとおばあさんは、『そうよ、昔はガタガタ道じゃったけどね』 『じゃあ、歩いて大社町まで行きよったんですか?』 『そうよ、元気な学生さんなら1時間、普通なら2時間くらい歩きよったねえ』 そう、昔からこの道はあり、昭和初期までは歩いて通っていたそうだ。 その後、地元の人が、ジープを改造した乗り合い自動車での営業を始め、その後、一畑電鉄が買い取ったのだとか。 『昔は道が酷うて、パンクは当たり前だった。 スプリングが折れて直す事もあった』と運転手さん。 『そんなにすごかったんですか』 『ああ、そうよ。 今の若い運転手は、あんまり機械の事を知らんじゃろうが、わしらの頃は、修理できんと走れんかったよ。 途中でエンジンが動かんようになって、お客さんに押してもらう事もあったな』 『冬は雪がすごいんですか?』 『いやあ、昔は毎日のようにチェーンを捲きよったが、最近は温暖化で、雪があまり降らんようになった』 『この海沿いの道は、冬に荒れたら凄いよ。 高い波が道路を越えてくる。 酷い時には、バスの上を波が越えていくこともある。 あそこの隧道なんか、川みたいになる。 そんな時には、トンネルの出口で一旦バスを停めて、波の周期を見る。 だいたい大きいのが来るタイミングはきまっとるじゃろう。 だから、タイミングを見計らって、いちにのさん でスタートする』 『そ、そんなにすごい波が来るんですか!』 『うん、年に1、2回はそんなのがあるな』 そうこうしているうちに、猪目本町に到着。 『ありがとうございました』 運転手さんにも、停車中にいろいろと珍しいお話を伺う事ができ、楽しいバス旅の一時であった。 猪目海岸は、西側にある山で夕日が遮られ、過ごし易い気温になっていた。 海からの風も心地良い。 大社町で夕食代わりの出雲蕎麦も食ったし、特製ベンチに座って、軽くつまみながらビールを飲むか! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 19, 2007 11:15:39 AM
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