テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
s海沿いのスペースに張ったテントの傍のベンチで、一本目の、キリリと冷えた旨いビールを飲み干し、次のビールに手を伸ばそうとしたとき、一人のおばあさんが歩いて来られた。
私が座っているベンチのすぐ後ろに立ち止まられる。 『こんばんは。 今日はここにお邪魔しています』と、挨拶をする。 すると、『少しは涼しくなったねえ』 『ええ、そうですねえ。 昼間はまだまだ暑かったです。 今日は、あのフネ、カヌーで蒲刈から漕いで来たんですよ』 『ほう、あの小さいフネで』 『そうなんです。 今日は時間があったので、大長の町を歩いてみましたが、好い所でした。 昔、蜜柑が高かった頃はとても景気が良かったそうですね?』 『蜜柑を作りよった人らに聞いたら、そうらしいね。 蜜柑箱は、千両箱と呼ばれとったしね。 私らは、蜜柑を作りよらんかったから、あまり知らんのよ』 『そうですか? 仕事は何をされよったんですか?』 『うちらは、船に乗りよったんよ』 *** 『ええ、船ですか! すごい。 どんな船だったんですか?』 『最初は小さい船で、蜜柑を大阪の方まで運びよった。 それから、雑貨を運んだりなんやらして、最後には油を運ぶタンク船になったねえ』 蜜柑を運ぶのは、夕方にこの大崎下島で積み込んで、夜の間に瀬戸内海を航海し、朝方市場が開く前に、神戸の港に卸すらしい。 『あの頃はね、いっつも天気ばっかり気にしよったもんよ。 蜜柑を運ぶ時にも、天気が良くて月が見えて、穏やかじゃったら、儲けたようなもんじゃった』 『そうですよねえ。 瀬戸内でも荒れますもんね。 ここの海でも、西風が吹いたらすごい波になりましたよ』 『そうそう』 『私らでも、明石海峡を通る時には気を遣いよったよ』 『えー、大きな船でもそうなんですか! たしかに、明石海峡は厳しいとは聞いてますけど』 『それにしても、あんたの船は小さいねえ。 見よるだけで、酔いそうなよ』 『大きな船に乗っとられた人からみたら、そうじゃと思いますよ。 でも、意外と安定性は良いんですよ』 その後も、家族経営での海運業の話し、大崎下島の話し、豊島大橋が開通する事の影響などなど、様々なお話しをさせていただいた。 *** かつては船に乗られていたと言う、地元のおばあさん。 家族経営の海運業をやっておられた、昭和の時代の貴重なお話を伺う事ができた。 本当に、ありがとうございました。 暮れていく御手洗の港を眺めつつ、ビールを飲み、日本酒をチビリチビリと飲り、眠くなるとテントに潜り込んだ。 *** 翌朝。 御手洗の町を散策し、日の出を見るため、高台にある展望台へと向う。 ↑ しだいに明るくなっていく、御手洗や大長の町並み ↑ 残暑が厳しいとは言え、朝の散歩は涼しくて快適である *** 1時間半ほどの散策を終え、テントに戻り、うどんの朝食。 食後はコーヒー。 今日は穏やかな良い天気。 残念ながら、風待ち/潮待ちの必要はない。 8時過ぎに荷物のパッキングを完了し、御手洗の港を出る。 帰りは、大崎下島の北側を通るルート。 少し遠回りにはなるが、往路とは違う景色が楽しめる。 ↑ 架橋作業が進む『豊島大橋』 この橋が開通したら、豊島や大崎下島、岡村島はどう変わるのだろうか? 豊島の小さな漁港の片隅で少し休憩し、2時間半ほどで出艇した浜に無事戻った。 うん、やっぱり私は『旅するシーカヤック』 『あるく、みる、きく』が堪能できるキャンプツーリングが一番楽しいなあ。 この週末も、良い旅ができた! *** ご参考: 蒲刈でのシーカヤックイベントについて *** 昨年始まった蒲刈でのシーカヤックマラソンが、今年も9月23日(日)に開催される。 問い合わせは、蒲刈B&Gセンターへどうぞ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 12, 2007 07:32:05 PM
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