テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
予定外の岡村島キャンプツーリング。 それでも、冬の暖かい日差しに照らされながら、お気に入りの浜でのんびりまったり過ごす午後の一時は、とても楽しい時間である。
午後5時過ぎ。 だいぶ日も傾いてきた。 そろそろ晩ご飯の準備にかかろうか。 *** 食材を準備していたら、階段の上の方から話し声が聞こえてきた。 見ると、二人のおばあさんが浜に続く階段の上に腰掛け、海を眺めながら話を始められた様子。 立ち上がって、『こんにちは』と挨拶し、再び夕食の準備を始めたが、しばらくすると『あのカヌーが。。。』という声が聞こえてきた。 ちょっと挨拶に行って来ようと、準備の手を止め、階段を登り、お二人の前へ。 『こんにちは。 この浜におじゃましています』 『あんたあ、あのカヌーで来たんね?』 『ええ、そうなんですよ。 今日、蒲刈の県民の浜から出て、漕いできたんです』 『ああ、そうねえ』 『岡村島は好きなんで、年に何度も来るんですよ』 *** 『カヌーはテレビで見た事はあるけど、本物を見た事が無かったんよ。 ちょっと、見させてもろうてもええかね?』 『ええ、もちろんですとも』 足が悪いと言うお二人は、えっちらおっちらと、ゆっくり階段を降る。 『転ばないように気をつけてくださいね!』 そしてシーカヤックの傍に。 私はパドルを手にとり、漕ぐまねをしながら、『このパドルでこうやって漕ぐんですよ』 『ああ、これが櫂じゃね』 『ここは何?』 『ここは防水の荷室になってまして、テントや着るものなんかをここに積んで来るんですよ』 『へえー』 つぎには、テントを指差し、『このテントは暖かいんね?』 『ええ、ちゃんと冬用のシュラフを持ってきてますからねえ』 『ちょっと大きいけど、何人用?』 『これは、3人用なんですよ。 子供と一緒に行く時なんかに使ってます』 するとおばあさんは笑いながら、『3人用! じゃあ、私ら二人も一緒に泊めてもらおうかねえ!』 『そりゃあええですねえ。 私は両手に花ですね!』と私。 『わっはっは』と笑いながら、『ええもん見せてもろうたわ。 ありがと。 じゃあ、気をつけてね』と、再び階段をえっちらおっちらと登って帰って行かれた。 *** 暮れて行く冬の瀬戸内の海を眺めながら、簡単な夕食を済ませると、流木を使って小さな小さな焚き火に火を入れる。 かすかに揺らめく、小さくて温かい焚き火に手をかざして暖をとりつつ、酒を飲む。 冬だからこそ、寒い時期だからこそ、この小さな焚き火のありがたさが、より一層感じられる。 *** 焚き火の火を消し、テントに入る。 シュラフに潜り込み、ヘッドランプで読むのは、昨日購入した『文藝春秋』 昨夜、キャプツーリグ用の食材を買い出しに行ったスーパーで偶然見つけ、芥川賞を受賞した川上未映子さんの『乳と卵』が掲載されている事を知って買ったものだ。 『乳と卵』 うーん、正直私には微妙であった。 文藝春秋には、選者の選考評も載っているのだが、私の感想は、石原慎太郎に近いかなあ。 *** 翌朝、6時過ぎに目が覚める。 まずは、ケータイを取り出し、天気予報を確認。 うん、今日も天気は良く、波も0.5mと絶好のコンディションだ。 いつものように、温かいうどんで朝食を済ませると、コーヒーを楽しむ。 シュラフを畳み、テントを片付け、着替えて荷物をパッキング。 風も波もなく、この時期にしては最高の海況なので、大崎下島の南岸を最短距離で漕ぐルートを選択した。 今日も潮は重い。 やっぱりこの時期、漕ぐ筋肉が落ちているのだろうが、一漕ぎ一漕ぎしっかりと水をキャッチながら漕ぎ進む。 途中で寄り道したため、2時間半ほど掛けて蒲刈の浜に戻った。 *** 天候に恵まれた冬の週末。 大崎下島の浜にテントを張ることができなかったのは残念だったが、大崎下島の弓祭りの話を伺う事ができたのに加え、お気に入りの岡村島キャンプツーリングを楽しむことができた。 今年は昨年に比べると、雪が多くて寒い冬だが、思った以上にキャンプツーリングを楽しむ事ができている。 あるくみるきく_旅するシーカヤック、なんだかついてるなあ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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