瀬戸内 シーカヤック日記: 家船の島を訪ねて、豊島訪問_完結編
日本で最後の『家船』が残っている瀬戸内の島、『豊島』親切な島の方に案内していただき、40年位前の家船のお話を伺った後は、数年前まで家船で漁に出ていたという、偶然出会った70歳のおばあちゃんから、これまた貴重な家船生活のお話を伺う事ができた。 うん! 本当に来て良かった。***おばあちゃんにお礼を述べ、挨拶して公園を出る。 さて、『豊島温泉』に入って、歩いた疲れを癒し、汗を流して帰ろうか。道を歩いていると、後ろからクラクションが。 振り返ると、午前中案内していただいた島の方だ。そのままクルマに乗せていただく。 『どうでした? 話しは聞けました?』『いやあ、残念ながら、現役の漁師さんとは知り合いになれませんでしたよ。 でも、昼ご飯を食べたお好み焼き屋さんで漁師さんから話しを伺い、さっきは、数年前まで家船で漁に出ていたと言うおばあちゃんから、家船生活の話しを聞く事ができました』狭くて迷路のような島の道を走りながら、再び島の事に付いていろいろとお話を伺い、結局、銭湯の近くまで送っていっていただいた。『じゃあ、気を付けて』 『ありがとうございました。 また、遊びに来ます!』島の銭湯、『豊島温泉』は、夕方4時からの営業。 4時半頃入ると、もう10人くらいの人が男湯に入っていた。 盛況だ!一人のおじさんに話しかけてみると、やはり漁師さんであった。 湯船は一つで決して広いとは言えないが、地元の人に愛されていることが伝わって来る、良い銭湯であった。一日島を歩いた疲れを癒し、汗を流して風呂をでる。 番台のおばさんに、『ありがとうございました』***狭い島の道を、適当に脇道に逸れながら歩いていく。 え、ここは行き止まりかなあ?家の前で洗い物をしているおばさんに聞いてみる。 『ここは道ですか? 海まで出られますかねえ?』『真っ直ぐ行って、突き当たりを右に曲がれば海に出られるよ。 あんた、昔の島には道なんかつくっとりゃせんよお。 家と家との間が道なんじゃけん』 確かに、言われてみればそうなんだろうなあ。 『そうですか! ありがとうございました』***おばさんが教えてくれた通り、無事海沿いの道に出て、そのままフェリー乗り場へ歩いていく。 船の時間までまたしばらくあるので、家族へのお土産に『太刀魚の一夜干し』を買う事にした。フェリーの切符売り場でも一夜干しが買えるようなので、窓口の女性の方にお願いして、切符とともに太刀魚の一夜干しを購入。お金を払いながら、『今日は家船の事を調べに、豊島に来たんですよ』 『そうなんですか! 豊島に興味を持ってもらってうれしいです』それを切っ掛けに、待合室におられたおじさんも加わって話しがはずむ。昔の豊島にはきれいで広い砂浜が在った事や、島の廻りの潮流の事。 斎島の『あびの里』の話題。 家船の事、回漕店の仕事の事。 2年後に完成する『豊島大橋』の事や、それができたあとの島の生活の変化の予測などなど。私からは、シーカヤックで瀬戸内横断したことや、毎年秋の瀬戸内横断隊の話し。 ハワイを出て、日本に向っている『ホクレア号』の事など。回漕店をやっておられるというその女性の方に名刺を渡し、『今回の訪問で、豊島のファンになりました。 また、遊びに来ようと思っています。 これからも、よろしくお願いします』『また、ぜひ遊びに来て下さいね。 待ってますよ』帰りのフェリーが到着し、その方に手を振ってから船に乗り込んだ。***フェリーを降り、バスに乗り換えて町へ戻る。今日は、充実した一日の余韻を楽しむため、久し振りに、昭和の雰囲気が残る、お気に入りの おでん屋さん 『あわもり』へ。カウンターでビールを飲み、おでんを味わい、あわもりを飲み、豊島での一日を振り返る。思いもかけない切っ掛けから、この島を訪れる事になり、家船事前調査の段階で知り合った島の方に案内していただき、その後、昼ご飯を食べたお好み焼き屋さんでも、漁師さんやマリさんにお話を伺う事に。 また、帰りには、回漕店の女性の方とも知り合いになる事ができた。そして極めつけは、数年前まで家船で漁をしておられたという、70歳になるおばあさんとの偶然の出会い。ほろ酔い加減で、『あわもり』を出る。 ビール大瓶と、あわもり一杯、そしておでん5品(かわ、厚揚げ、たまご、じゃがいも、たまねぎ)で、1200円でお釣りが来た!これまた、涙ものである。 感涙。***瀬戸内の海洋文化の一端に触れる事ができた、『あるく、みる、きく』の旅。 まさに至福の一日であった。