昨年、手に入れて読み始めたのですが、予想以上に私の中の琴線に触れてくる作品でした。
伊藤計劃先生原作の映画だと「屍者の帝国」や「ハーモニー」の方が好みでしたけど、原作小説に関しては「虐殺器官」が好き過ぎる。
正直、読んでビックリしました。だって、映画では、主人公が母親の延命措置を止めたことに対する葛藤や日々苛まれる悪夢の情景、それらを抱えたまま特殊部隊の任務に携わり続けるその心の危うさみたいものが全く省かれてるんですもの。その癖、大筋の流れやアクションシーンはこれでもか、と克明に映像化しているので「そういう作品」だと思ってみちゃってたんですよね。
でも、本当に危ういのは実は主人公の精神性の方で、初めから正気と狂気の崖っぷちを彷徨ってたんだな、っていうのが小説を読んで分かったのはちょっとびっくりでした。
だから主人公が
「神は死んだ。神は死んだ。大いに結構。僕はルツィアに赦してもらえれば、それでいい」って思ってたのを読んだ時は本当に驚きました。
映画の方はそう言った部分をかなぐり捨ててた印象で、寧ろ、これは中途半端に描写するのは避けた、という事なのかな、と思う今日この頃です。
個人的にはラストシーンの
「うるさいな」からの「けど、××××の××は××だろうな、と思うと少し気持ちが和らいだ」を読むと、少しだけ私もふふって気持ちになれます。
個人的には日々の仕事や生活に「なんか違うな」と思い悩んでる人ほど心に触れてくる作品じゃないかと思います。オススメ。