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※広告が含まれます。案件ではございません。 「コマコ、逃げるわよ」 桜庭一樹先生の小説の中で一番のお気に入り。 先生の作品は、心を抉られる話から、しんみりするお話、単純に面白いお話と色々なんだけれども、一冊残すとしたらこれかな、という印象。 幼い主人公・駒子とその母親の逃避行から始まる物語なのだけれど、冒頭からして人殺しと暴力と性的倒錯に満ちている。 その母親に付き従うようにして各地を旅しながら駒子が徐々に大きくなっていく前半と、父親に保護されるも平穏な家庭に馴染めない駒子が独り生きる後半に大きく分けられていて、取り留めないの夢から地続きの現実に引き戻されたような不思議な感覚がした。 個人的に気に入っているシーンが二つあって、一つは中盤で高校生になって初体験後の話。 BANG!BANG!BANG!交尾する。皆殺しだ。人数は夜毎に増えて、プールサイドで交尾を終えて図書室に戻り、床で本を読んでいても、女の子達はドアを蹴破ってきたり、天井から飛び降りて来たり、本棚の陰から突然現れてあたしの前でボウタイをほどく。抱いて。抱いて。抱いてよ。虫の大群みたいにあたしに群がって来て、あたしはまだできる、まだまだできる、と女の子にいつだって優しくキスをする。止まらない。助けてよ。 天井から飛び降りてってどんなだよ、って思わずフフフってなっちゃった(笑) もう一つは後半で小説家になった駒子が仕事から逃げ出して流浪している最中、AV女優の少女と偶然同居する事になった時の話。 「……仕事」 ここのやり取り、なんかすごく好き。でも、最後は悲しかった。 「助けてよ、のサイン。でも爆発してる女の子を助ける事なんて誰にもできない。最後まで見ててやることしかできない」っていう駒子の独白が印象深かった。 桜庭一樹先生の作品ではもう一作「私の男」という作品が強烈な印象を残している。 こちらについては……正直、内容についてどうコメントを返していいか悩ましい。 ただ、読み終えた時に主人公の花と「ファミリーポートレイト」の駒子とで対になるものをどこかに感じた。 二人とも親に与えられたものにずっと縛られて生きているからか。それとも。 あと、時系列を遡って徐々に過去に踏み込んでいく構成には舌を巻きました(-人- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年11月05日 20時12分27秒
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