通夜 |
[通夜の意義] |
通夜とは文字どおり、葬儀の前夜に近親者や友人、知人など故人と苦楽を共にした人々が仏前に相集い、安置したご遺体を見守り、故人を偲ぶということです。人生で最も悲しい別離である「死」という現実に直面して、遺族とともに在りし日の故人を偲びつつ、その死を他人事とせずに、自分の問題として、真実のみ教えであるお念仏に出あわせていただく大切な仏事です。ですから、雑談にふけったり、むやみに飲食することのないように注意が必要です。 |
[通夜勤行] |
通夜のおつとめは、定められた作法により執り行われます。おつとめは、できるだけ導師とともに唱和するようにしたいものです。通夜のおつとめよりも弔問客への挨拶に忙しいご親族の方を見受けますが、おつとめの最中は挨拶の場ではありませんので、儀式に集中していただきたいものです。会葬者への挨拶は、出棺のときに行うものですから、儀式の最中に挨拶をする必要はありません。
読経内容は、地方によっても異なりますが、本願寺派(=お西)では「仏説阿弥陀経」または「正信偈」(関東では「初夜礼讚偈」を用いることもある)、大谷派(=お東)でも「仏説阿弥陀経」または「正信偈」を用いるのが一般的です。 合掌礼拝時は、導師に合わせて行うようにします。なお、御詠歌は他宗の作法であり、浄土真宗では用いません。
法名の授与が済んでいない場合、通夜式の前に帰敬式(法名授与)を行うことがあります。 |
[参詣の作法] |
参詣者が仏前で礼拝する時に線香を立てているのを見かけることがありますが、浄土真宗では線香を立てません。線香は江戸時代中期に考案されたもので、燃香という正式な作法を略式にしたものです。そのため、たとえ線香を用いても形は燃香に近いように線香を香炉の大きさに合わせて二、三本に折って、横に寝かせて供えます。
おつとめ(読経)をしないで合掌・礼拝だけを行う場合には、決して「キン(リン)」を鳴らさない。 |
[焼香の作法] |
焼香時の作法も宗派によって違いがあります。真宗でも各派によって多少異なりますが、浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)の作法は、次のとおりです。
1. | 焼香卓(香炉が置いてある机または台)の二、三歩前で、ご本尊に向かって一礼します。 | 2. | 左手に念珠を持ち、焼香卓の前に進み(座敷のときには正座し)、右手で香盒(香の入れ物)の蓋をとって香盒の右端にかけ、右手で香をつまんで、持ち上げずにそのまま一回だけ(大谷派は二回)香炉にくべます。(このとき、香をつまんでから頭や額のあたりに持ち上げておしいただく人が多いようですが、浄土真宗では香をおしいただきません。) | 3. | 香盒の蓋をして、念珠を両手にかけて合掌し、お念仏を唱えながら礼拝します。 | 4. | 二、三歩後ろにさがって、再度ご本尊に一礼して退出または自席に戻ります。 |
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[通夜式後・その他] |
通夜式の後に蝋燭の火や香を絶やさないようにとの配慮から、親族が交代で徹夜の番をするという習俗がありますが、浄土真宗ではそうしなければいけないということはありませんので、蝋燭の火を消して十分に睡眠をとるように遺族に案内しますと喜ばれます。もちろん、蝋燭の火や香を絶やしたからといって故人が迷うなどということはありません。 |
葬儀 |
[葬儀の意義] |
葬儀は、葬場において故人の死を厳粛に受け止め、故人を縁として一人ひとりが真実の教えにあい仏徳讃嘆させていただく仏事です。儀式として落ち着いた気持ちで厳粛にとりおこないましょう。 現在行われている本宗葬儀の勤式は、本願寺第八代蓮如宗主の葬儀次第に準拠し、伝承されてきたものであり、他宗派で言う、引導をわたすことではありません。浄土真宗のご葬儀では引導をわたすということはしません。 |
[葬儀式次第] |
喪主、遺族、近親者は定刻より早めに会場に入り、念珠を左手に持って所定の席に着きます。席次は壇に向かって右側が遺族、近親者で、最前列の一番中央寄りに喪主が座り、血縁順に順次座り、二列目以降も同様に着席します。
導師が入場されたら、椅子席のときは起立して、座敷のときは正座して軽く頭をさげてお迎えします。導師が着席したら式がはじまりますので、合掌礼拝は導師にあわせて行ってください。なお、葬儀の手順は地方によって多少の違いがありますので、導師と事前に打ち合せを行ってください。ここでは、一般的な式次第を紹介します。
1. | 遺族・参列者入場、着席。 | 2. | 導師入場、着席。 | 3. | 開式の辞。 | 4. | 勤行(おつとめ)開始。
・導師焼香。
・喪主、遺族、近親者焼香。
・一般会葬者焼香。 | 5. | 弔辞拝受。弔電代読。
・弔辞、弔電は勤行の前または後にする。導師退出後に行ってもよい。 | 6. | 導師退出。 | 7. | 閉式の辞。 |
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[告別式] |
告別式とは、葬儀終了後、亡き人に対し別れを告げる儀式で、宗教儀式ではありません。最近は、葬儀のことを告別式と呼んでいることがありますがこれは間違いです。しかしながら、最近は時間の関係上葬儀の中に告別式を取り入れているのが現状であり、そのために遺族が一般会葬者への挨拶に気を奪われて、葬儀の本意が見失われることもあります。葬儀は挨拶の場ではありませんので、故人と縁の深かった人たちで心静かに儀式を執り行いましょう。 |
[出棺] |
葬儀のおつとめが終わったら、出棺の準備に入ります。葬儀壇から棺をおろし、式場の中央に安置し、近親者等の内輪の者だけで最後の対面を行います。 このときは、必ず合掌してお念仏を称えましょう。最後の対面が終わると、棺のふたに釘を打ち(「釘打ち式」は必要ありません)、近親者や故人と特に親しかった人たちの手で棺を霊柩車に運びます。このとき、棺の頭の方が先になるようにします。
棺内に「納棺尊号」が入っていない場合、僧侶が納棺尊号を入れに来ることがあります。
霊柩車が火葬場へ出発する前に、喪主または親族の代表者が、出棺の見送りをしている会葬者に対し会葬御礼の挨拶を行います。この挨拶のときにも浄土真宗にふさわしくない言葉を使用しないように遺族に注意してください。
出棺のときに、茶わんを割ったり、わらを燃やしたり、お棺を回したり、往路と復路の道を変えたりする風習が各地にありますが、浄土真宗では行いません。これは日本古来の霊魂観にもとづくもので、霊が立ち帰り災いを及ぼさないようにという迷信やおまじないの類で、仏教的な考え方ではありません。 お盆には戻ってこいという風習があり、葬儀のときには戻ってくるなという風習があるではつじつまが合いませんとは思いませんか。 |