モンテ・フェルモの丘の家
モンテ・フェルモの丘の家ナタリア・キンズブルグ須賀敦子訳ちくま文庫1998年10月22日 初版モンテ・フェルモの丘の家家族、友人たちの手紙のやり取り形式で描かれるこの作品。乾いた筆致と、繊細な描きわけが素晴らしいです。ナタリアとピエロ夫妻が住む、モンテ・フェルモにある屋敷、マルゲリーテ。ルクレツィアとピエロの友人たち。その中でもジュゼッペは特にルクレツィアと親しい。そのジュゼッペが、兄を頼ってアメリカに行くことにした・・アメリカでのジュゼッペの生活。ルクレツィアの恋愛。ジュゼッペの息子、アルベリーコ。親戚のロベルタ。そしてともだち、ともだち・・ある年代を過ぎて、誰かの保護から抜けて自分で歩まなければならないこれから。それぞれの選択。手紙だけなのに、それぞれの性格や感情、今隣の部屋にいるように繊細に描かれていて。乾いた筆致で、縺れていく感情がすごく丁寧描かれています。この小説を読んで、色でいうとわたしはグレーを感じました。決して爽やかではなく、気が晴れることなく。陰鬱で、ひたすらで。でも、そういう気持ちの時に読むととてもああ、ってなる。何度も読み直してる、好きな本です。