スペンサーの料理。
スペンサーの料理東道夫 馬場啓一早川書房1984年8時31日発行知る人ぞ知る、もちろん知らない人は知らない、ロバート・B・パーカーの小説主人公、スペンサーが食べた物、作った物、飲んだお酒などの料理本。東道夫さんと、馬場啓一さんが調べ、作ったり現地に食べに行ったりと徹底して再現しています。まず、巻頭にパーカー本人の序文。ユーモア溢れる1ページが貴重。さすが食べること作ること大好きなスペンサーだけあって、この本も美味しいが充実。第一部 料理第二部 酒第三部 レストラン・ガイドの三部構成。これが素晴らしい。第一部、料理はやっぱり東道夫さん。オードブル・アペタイザー、スープ、魚介料理、肉料理、卵料理、家禽料理、野菜料理、パスタ、サラダ、パイ&ビスケット、サンドイッチ、プリザーブ類!田舎風パテだの、スカラップ・ジャックだの、ローストダック、フライド・グリーン・アップル、レッドビーンズ・アンド・ライス、チーズとオリーブのギリシャ風サラダ、ホット・ビスケット、BLTサンドイッチ、ピーチ・チャツネ、ワイルド・ストロゥベリィ・ジャム(この辺の書き方が東さんっぽい)など、30種を超える料理、小説からの引用そしてエッセイが書かれています。想像しても楽しい、そして作りたい方にはレシピも。所々に可愛いイラスト入り。東さんの軽妙な言葉が楽しい第一部です。第二部、お酒は馬場啓一さん。まず、スペンサーが飲むお酒、そして著者パーカーのお酒についての考え方、意味の持たせ方の考察。なるほど!!お酒の飲み方、選び方、もちろん、意味があるわけで。で、まずビール。ここだけ東さん。ビールについて私見を交えて。そしてウィスキー。スペンサーはどの作品の中でもウィスキーを飲んでいる、で始まるスペンサーとウィスキーについて。次にカクテル。スペンサーは飲まないのだが、依頼人やビジネス相手が頼むカクテル。なるほど!そのカクテルを飲ませるにはそういう意味があるんだ、とすごく楽しい。ピーニャ・コラーダ。ラムとココナツミルクをかき混ぜ、パイナップルを添える甘いカクテル。見た目も可愛い。これは私も覚えていて、笑った覚えがあるが、相棒ホークが頼む。すると、「奴はいつでも恥ずかしさというのを知らない男だ」などとスペンサーは思うのである。ブランデー。女性絡みの考察でなかなか興味深い。レミー・マルタン、グラン・マルニエ、なるほど。ワイン。グルメでグルマンなスペンサーは当然ワインにも詳しい、と始まり、スペンサーの食事に頻繁に登場するワインの立ち位置について書かれている。恋人スーザンはワインが好きなようですね。誰といて、何をしてた時、これを飲んでいた、と細かく品名も書かれています。でも、「現在のところ、パーカーの知識は中の中程度ぐらいの程度であると思われる」とバッサリ。そしてそしてシャンパン。スペンサーがシャンパンを飲むのは3人だけである、に始まり小説の中での扱われ方、そしてシャンパンの起源まで。ドン・ペリニヨンは坊さんの名前で〜からは初めて知りました。コルク栓を使ってワインのフタをする方式もこの坊さんが始めたこと、らしいです。しかも・・続きは読んでみてください。第三部。レストラン・ガイド。こちらも馬場さん。スペンサーが立ち寄った店を調べるため、ボストンに足を運び、20軒の店に訪ねています。現存していたのがそれだけなので、それを上回る店だったところ、も尋ねていて、労力がすごい。バー、シーフード・スタンド、デリカテッセン。高級レストランから、ダスキン・ドーナツまで、幅広い。そして、そのレストランと街の感じの描き方が、とてもとても素敵。すぐにでもボストンに行きたくなる。お店の雰囲気、スペンサーたちが食べたメニュー、写真も豊富。すごくいいレストラン・ガイドです。巻末にお2人の対談のおまけあり。この本を読んで、またパーカーを読んで、またこの本、と何度も楽しめます。