191833 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

kazesan 2

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
Oct 16, 2007
XML
カテゴリ:日々のカケラ



 
 長女のナミが午後から白内障の手術を受ける。今では日帰りするほど簡単な手術になっているそうだ。けれども老いてからの自然な症状ならわからないでもないが、なぜ今、という気持ちにもなってしまう。叶うものなら代わってやりたい。このおやじなど、もう十分すぎるほどに健康に生かしてもらった。

 10年以上も前の高校受験の年だった。ナミの目は、今と同じ白内障で右目が見えなくなった。網膜剥離の左目と合わせて、数週間入院して光を取り戻したことがある。現代医療を半ば否定していたぼくは、手術などしなくてもなんとか治せるはずだと、あまり気乗りしない娘を連れてあちこちと民間療法を尋ね歩いた。快医学、枇杷葉温灸、レイキ、外気功、酵素玄米、浄水器。健康食品の類いなどどれだけ試したか忘れてしまったほどだ。今から思えば娘には本当に無理をさせてしまった。「これ以上長引くと、手術もできなくなりますよ」と医者に言われた娘の見えない目を見つめながらついに観念した。


Dc3169.jpg


 中には、いかがわしいのを承知で出かけた気功治療院もあった。後に摘発されて、やっぱり、と自分を笑ったが、その時は騙されてもいいと思っていた。万にひつでもありそうな可能性に賭けたかった。

 その治療院で行われたまじないもどきの儀式に参加したことがある。願い事を紙に書き、それを持って煮えたぎる油の入った鍋に両手を入れるものだった。いかさま治療師のその男の呪文でもとりあえずは熱くは感じなかった。ヨシエどんもぼくも、「娘の目が治りますように」と当然のように書きながら、となりのナミの用紙をのぞき見た。目に飛び込んできた言葉に、ぼくは恥ずかしくなった。そこにはナミらしい踊るような文字で、「世界が平和でありますように」とていねいに書いてあった。

 入院期間中のナミは、同室だったお年寄りたちのアイドルになった。退院するとき、「ナミちゃん、元気でね」と涙を浮かべた老婦に抱きしめられ、微笑みを浮かべて「はい」と頷いていた娘を今でも思い出す。どんな経験もきっと人生の肥やしにはなるのだろう。ナミは一段と優しい子になったような気がする。その娘にも今ふたりの子がいる。あれから世界は平和になったのだろうか。せめて今日一日ぐらいは娘と共に、心を静めて祈っていよう。

 
 
 


 









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Oct 16, 2007 11:16:56 AM
[日々のカケラ] カテゴリの最新記事


PR

Profile

kazesans

kazesans

Category

Freepage List

Recent Posts

Comments

kazesans@ Re:こんばんは^^ 雪花鶏・ゆきあとりさん えっ? お気に…
雪花鶏・ゆきあとり@ こんばんは^^ 満月の白山、とても大好きな一枚です。 …
kazesan@ Re:一期一会 縷衣香さん 波紋かぁ、なんだかぼくの今…
縷衣香@ Re:一期一会(11/28) 或る日、ゆうこさんのブログを最初の日か…
kazesan@ Re:お久しぶりです だいだーさん 元気そうでなによりです。…
kazesan@ Re:僕は ささき春喜さん ぼくにとってスキッパー…
だいだー@ お久しぶりです。 お久しぶりです。 だいだー、かなり変…
ささき春喜@ 僕は・・・ 身体の中から・・・海だ!海だ!!という…
kazesan@ Re:感謝です mackyさん 紅茶の時間のことですね。ぼく…
kazesan@ Re:宇宙の約束 masaelさん 何度も何度も泣いて、もう涙…

Favorite Blog

☆ クレアゆうこの部… クレアゆうこさん

© Rakuten Group, Inc.
X