カテゴリ:日々のカケラ
雨が降っている。心までしっとりと濡れて、潤うのだ。雨の日が好きだ。ジョギングはやめた。代わりに横着して軒下気功だ。どこにいても人は、あめつちのはざまで呼吸しているのさ、などと横着の理由を考えながら。登校する中学生の女の子たちが、なにやら歌って通り過ぎて行った。文化祭の練習だろうか。笑い声のまじった澄んだ歌声が住宅街の静かな朝にこだました。雨で潤ったぼくの心に微笑みが広がった。見えなくなっても聞こえてくる。思わずないしょで拍手した。 中学生って、いいなぁ。白山に登った少年たちも、あんなだった。性格も環境もみんな違うし、それぞれに抱えた悩みや苦しみがあるにはあるけれど、純なやつらだった。駆け引きというものがなかった。 山小屋で賑やかな大学生のパーティといっしょになった。男女が10数人、夜の静けさをどこかに押しやってしまった。特別気にもならなかったが、近くにいれば目にも入った。かわいい子が大声を出して、笑顔を振りまいている。静まったかと思えば、今度はさかんに視線を動かして仲間たちをのぞきみていた。駆け引き、という言葉が浮かんできて、ぼくはなんだかそらおそろしくなった。大人の関係には、駆け引きがあるのだ。ぼくにもきっと同じように。 ぼくの小さな仕事の世界でさえも、駆け引きが目立つようになった。不景気がつづいて以前のような大らかさがなくなってしまったんだろうか。まっすぐな関係が感じられなくなっている。もちろん時代に関係なく駆け引きが仕事だと思っている輩がいたことはいた。正直さ、素直さ、そんなものだけで仕事ができたらどんなに気持ちがいいだろう。ぼくは生涯仕事をしつづけてもいいと思うだろう。 山にいると、小さなことはどうでもよくなる。できるならこのままずっと山に居たいと思うくらいだ。大自然は潔い。生まれて死んでゆくことを、その間の地上の生を淡々とその場で繰り返しているみたいだ。そうだ、まるで今朝の中学生のように天真爛漫に歌いながら。中学生はいいなぁ。学校現場が荒れているとどこからともなく聞こえてもくるけれど、純なやつらに純な大人で向き合ったらどうなるだろうか。できることなら、駆け引きのない山のような大人でいたい。雨があがって、青空が広がっている。晴れの日も好きだ。心まで広がって、喜んでいる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 18, 2007 10:44:20 AM
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