カテゴリ:日々のカケラ
自分はいまこそ言おう 山村暮鳥 なんであんなにいそぐのだろう どこまでゆこうとするのだろう どこで此の道がつきるのだろう 此の生の一本みちがどこかでつきたら 人間はそこでどうなるだろう おお此の道はどこまでも人間とともにつきないのではないか 谿間をながれる泉のように 自分はいまこそ言おう 人生はのろさにあれ のろのろと蝸牛(ででむし)のようであれ そしてやすまず 一生に二どと通らぬみちなのだからつつしんで 自分は行こうと思うと 原っぱからの帰り道、カタツムリに出会った。いくら山道とはいえ、ここは畑に通う車が朝早くから通るんだぞ。しゃがんで見つめているうちに、持って帰りたくなった。ジョギングはやめてゆっくりと歩いた。かたつむりとお話しながら。 カタツムリはでんでん虫とも蝸牛とも呼ばれてなんとも人気者だが、実は陸に棲む貝類だ。いしかわ自然学校関連の講座ではじめて陸貝という言葉を聞いて、急に興味がわいた。貝なんて水の中だけのものかと思っていたのに、生き物ってほんとうに不思議なやつがいっぱいいるもんだ。 殻には右巻きと左巻きがあるが、日本産のものでは種ごとに巻きの方向が遺伝的に決まっていて、大部分は右巻きだとか。こいつも大部分の一匹だった。庭にそっと放して、しばらく観察した。1分もしないうちに、殻の中からモゾモゾと身体を出してきた。触角をニョロニョロと伸ばした。こっちが頭だな。2対ある。つのだせ、やりだせ、目玉だせ。だったかなと歌ってみた。長い方の触角の先端に、確かに目のようなものがあった。あたりを伺うようにゆっくりと旋回させている。緩慢な割にはなんとも用心深いやつだ。おっ、180度も振り返って様子を伺ったぞ。愉快なやつ。ずっと見ていても、これなら飽きそうにない。 渦の数を数えれば個体の年齢がわかるとか言っていたと思うが、それでいくと、こいつは4年目ぐらいになるんだろうか。もしもそうならすごい話だ。4年間もこんなペースで動いて、食べて、生きている。ところで何を食べているのだったか、講座で聞いたはずなのに、少しも覚えていない。陸貝への興味はわいただけで、それから一度も深めた試しはなかった。なにごとも、だいたいこんなぼくだ。なにもかも中途半端。ま、それでも慌てることはない。のろのろと蝸牛のようであれ。10分ほども見ていたが、動いた距離はほんの数センチだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 24, 2007 11:29:11 PM
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