カテゴリ:日々のカケラ
「あめつちのしづかなる日」の2日間を終え、ほっとして、ヨシエどんとふたり遅い朝の食卓だった。おふくろがぼそぼそと、ひとりごとのようになにやらしゃべっている。いつものことだが、今朝のはすこし大きめの声だった。「きょうでじいちゃん、81んなったぞ」。おっ、そうか。誕生日だったか。そこへおやじが入ってくる。毎日おなじことが繰り返されている。朝のコーヒーをたててくれるのだ。 「おとうさん、誕生日おめでとう」。 目を見て、大きな声で言わないと届かない。 「おお、わしかっ。きょうは誕生日かぁ」。 「そうや、81歳おめでとう」 「はははっ、80を越えたんは知っとったけどな。ははははっ」 入れ歯をすればいいのにと言ってもそのままだから、隙間から空気が抜けて気も抜けたような妙な笑い方だ。 「長生きしたもんやなぁ。ありがと、ありがと」 息子の心は、ぽっとあったかくなった。こんなこと言うおやじじゃなかったのに。近頃は日がな一日テレビの前に陣取っている。生涯を働き通しできたおやじだからもう動きたくないのかもしれないと、そばにいてときどき思ったりする。それでも愚痴一つこぼしたことがないおやじだった。もしかすると、人生を達観しているな、とヨシエどんとそんな会話を楽しんだ。息子も少しはおやじを見習うべきか。いまだに愚痴や文句が出てしまう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 5, 2007 11:20:05 AM
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