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愛する人の待つわが家へと、今夜は心やすらかな帰り道。そんな道で見かける旅人は、なぜだかとても愛しい。越後湯沢駅の階段を大きなスーツケースとバッグを両手に、長い黒髪の若い女性が降りようとしていた。きれいな方だ。ぼくも年を取ったものだ。なんの照れも気負いもなく近づいて、手を貸した。持ち手を離さない女性の手にふれながら、ゆっくりと並んで降りた。車内を出たばかりだというのに、その手はもう冷たかった。ありがとうと、なめらかだが、ご両親のひとりはどこかよその国の方のようだ。バランスがね、この方が歩きやすいみたいよ、と言うと、でもわたしの大きい、と返してきた。だから持ってあげたんだよと、ふたたび心で返す。おたがいそれ以上見合うことはなかったが、きっと見えないところで微笑んだ。誰もがみんな帰り道。行く先は、わが家なんだ。寄り添いあって、歩いてゆこう。
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Last updated
Nov 17, 2007 07:14:53 PM
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