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僕がテニアン島に配属になって随分経つ。
今夜はいつもに増して湿度が高く寝苦しいのも手伝って、夜更かしをしている他の兵士達の笑い声を聞きながらベッドの上でアメリカ本土に居る母親に手紙を書いていた。 そこへ同じ部屋の仲間のうちの一人が、かなりの『酒の臭い』を連れて僕に話しかけてきた。 「よぉ、どうだい?眠れないのか?」 それに対する返事は彼から目を反らす事で事足りる。 「まぁ、無理も無いな。8月6日の『極秘大作戦』の欠員が出た。代わりにお前が行く事になったんだ。興奮もするだろうょ?」 そういって彼は馬鹿笑いし始めた。 僕は今日テニアン島に帰還した極秘作戦を担ったB-29に『風邪をこじらせた兵士』の代わりに搭乗する事になった。 機長としてポール・ディベッツ陸軍大佐、兵器担当兼作戦指揮官のウィリアム・S・パーソンズ海軍大佐が任命され、他にも爆撃手にトーマス・フィアビー陸軍少佐が登場するという事以外に多くを知らされていない。 どちらにしろ、この戦争は最早ただの殺戮に変わり始めている事に疑問を抱いていた僕にとっては名誉でも何でもなく、ただ、今はこのテニアン島からの任務の終わりを待ち望んでいるところだった。 「手紙に遺言じみた事なんか書く必要なんか無いぜ。日本にはB-29みたいに成層圏を飛べる翼なんかもってねぇんだからょ?まぁ、気楽にいけや。」 そう言い残して彼はまた仲間のところへ戻っていった。 テニアン島離陸まであと27時間45分…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年06月04日 22時27分57秒
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