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昨日、丸1日を使って案内をし、
一人暮らしのおばあちゃんから申し込みをもらった。 最後の方はかなり強引な交渉で、 早急に契約したかったので、月曜日お金振込み、火曜日契約という段取りにした。 もちろんおばあちゃんも納得の上なのだが、交渉の過程で気になることがあった。 おばあちゃんは12年前に主人を亡くし、一人で生活をしている。 生前、主人は建築業に従事しており、かなりの資産を持っていたとのこと。 子供のいないおばあちゃんは全ての資産を引き継いだが、銀行の通帳やら、印鑑が、ずいぶん以前からないとのこと。 おばあちゃんの口座にも、かなりの大金が入っていたが、友人にお金を貸したり(返ってこず)、騙されたり等でほとんど無いとのこと。 家を買うためには、おばあちゃんの口座のお金じゃ全く届かないので、主人の通帳を銀行に問い合わせるしかないみたいであった。 かなり雲行きがあやしく、お金の振込みかたも間違えてしまう可能性があったので、俺がついていって、一緒にお金を下ろし、振込みをしに行くことにした。 今日の朝 8時半におばあちゃんの家まで行き、一緒に銀行へ行く。 神戸市には三宮にしかない中央○○○○銀行であり、10数年前に破綻した○○○拓殖銀行を引き継いだ銀行。 もちろんおばあちゃんの主人が口座を持っていたのも、破綻した銀行のもの。 銀行に理由を説明するのはおばあちゃんでは難しいと思ったのもあって、俺がついて来たというのも理由のひとつ。 開店したての窓口にスーツを着た若い男とおばあちゃんという、孫とおばあちゃんとは到底見えないようなコンビで並んで行き、俺が窓口のお姉さんに事情を説明する。 「この方のご主人さんが12年前にお亡くなりなって、その当時○○○拓殖銀行の口座を持っていらっしゃったのですね。その後銀行が無くなり、口座変更の案内が何回か届いていたそうなのですが、そのまま放置をしていて、さらに通帳まで見つからないんです。おそらくこちらの銀行の方に口座が移っているかと思いますので、その残高がまず知りたいのですが・・」 自分でも無理のある話だと少し感じたが、窓口のお姉さんは理解したらしく、調べることが可能だと答えた。 「その方のお名前と住所と生年月日をお願いできますでしょうか」 お姉さんはおばあちゃんに向かって、優しい口調でお願いをする。 そして、ふと疑問に思ったのか、俺にも同じ口調で質問した。 「あの、ちなみにこちらの方とはどういったご関係でしょうか?」 もっともな質問だ。 しかし、そんなこと考えてもいなかった。 「えーと、親族というわけではないのですが・・」 突然の質問に俺がたじろいでいると、隣で主人の名前を書いているおばあちゃんが俺をフォローするかのように、お姉さんに言った。 「わたしゃ、この人にお金を払わないといけんのじゃ」 なぜか、銀行員に訴えるかのように。 俺は周りの人間から目線が刺さるのをリアルに感じた。 隣の窓口のおばさんは、俺の顔を覗こうとしてくるし、俺の前のお姉さんは冷静さを無理に保とうしているように見えた。 さらに後ろに座っているおばさまたちは、おばあちゃんを応援するかのように小声でしゃべりあっているようにも見え、銀行の中の人たちを一瞬にして敵だらけにしまったような気分だ。 「あっ、ただの不動産屋さんなので・・」 今更何を言ってもと思ったが、自分の身を守る言葉を言っていた。 おばあちゃんがなんとか主人の内容の記入を終えたので、お姉さんが調べてくれた。 そして、 おばあちゃんにとってはショックなことに 「残高が2200円です。」 と淡々とした言い方で答えが返ってきた。 おばあちゃんが必至に訴えたが、データの紙まで見せられ、反発することもできなかった。 俺も何か他にないかと、おばあちゃんと銀行員を問い詰めたが、方法は無かった。 おばあちゃんを家まで送っていき、家の前で別れた。 おばあちゃんのことを考えると、辛いが、俺の中では真実は全くわからなかった。 ので、部長に報告した後、他社のモデルルームを見て事務所へと帰った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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