Valentine's Day 2010:For Lovers

February 14, 2010

テーマ：Love Songs(54)

カテゴリ：Love Songs

今年は知り合いが2組今日、結婚式を挙げる。

大学の恩師ケイとは今も親交があり、私が最も尊敬する人物のひとりだ。いつでも、
何があっても気丈で、どこか男性らしい大きな優しさを持つ女性。これまで仕事一筋で
ずっとひとりで生きてきた。が先月70歳を迎え、今日まさかの電撃結婚をしてしまう。
運命のお相手は73歳の弁護士。彼には結婚歴がある。

「結婚するのよ」

「ええ？誰が？」びっくりして思わずそう言ってしまったのは1ヶ月前。

二人の出会いは去年の10月で他大学のシンポジウムだったようだが、きっかけは2度の偶然。

一度目は、互いにひとりで来ていた映画館でシートに隣り合わせた。
二度目は、地下鉄の、線路を挟んだプラットフォームで、ケイが友達を見つけて手を振ると
たまたま後ろを通りかかった彼が、彼女が自分を見つけたと勘違いして手を振った時。

これだけ？

けれど恋のキューピッドは確実に、彼等に照準を合わせていたのだ。

翌日マシュウはケイのオフィスを訪ねる。「金曜日、時間があったらドリンクをどう？」
そして約束の夜、待ち合わせ場所のバーに着くと、彼等は笑顔で驚き合うのだ。

「気が合うんだね、きっと」

彼が彼女に差し出した1本のバラはオペラ・モーヴ。彼女も同じ色のシャツを着ていた。

人生を知り尽くした大人二人に、恋の炎が燃え盛った。マシュウはクリスマス、
ケイにプロポーズした。

「妻が亡くなって、僕は死ぬのを恐れなくなっていた。でも今、君に出会って、まだまだ
死にたくないと思ったんだ。ミルンじゃないけど」
「あら、お断りよ。私はあなたより1日長く生きていくなんて嫌。それならいっそ、同じ日に
死ねるように、今からお祈りしましょうよ」

くまのプーさんの生みの親、A.A.Milneが愛する妻に言ったという言葉。
―君が100まで生きるなら、僕は君より1日早く死にたい。そうすれば、君のいない世界で
　生きて行かなくても良いのだから―

ケイは私に、「これまで生きてきたのと同じ長さの時間はもう私達には残されていない。
勿論、死を意識する日も多くなる。でもそうした中で、大切なものをより大切に思える
幸せが、死を迎える恐怖を超えたの。今日までひとりで生きて来た、彼は神様からの
最高の贈り物なのよ」

愛のかたちが人の数だけあることを改めて知った。恋することは本当に素晴らしい。
心が華やぎ、日々が楽しく、自分を振り返ることもできるようになる。生きる喜びは、
人生の終わりが訪れるその日まで味わいたい、彼女の話を聞きながらそう思った。

二人はこれから結婚式。そして夜にはハニムーンのバハマへ発つ。