Thursday-Night Movie:L'auberge Espagnole (2002)

February 18, 2010

フランス映画は、だいぶ前に観た「世界でいちばん不運で幸せな私」以降心なしか敬遠
してしまっていた。ご覧になった方はお感じになられなかっただろうか、あの終わり方の、
息苦しさを。いえ分かっているつもり、あれがフランス映画の落としどころだということは。
そしてフランス映画の性質＝シュルレアリズムを知った上で観るべきであることも。ただ
余りに深過ぎる結末に、「こ、これって幸せ？」と思ってしまったのだ。

フランス人の女友達に言わせると「ヘヴィな恋を知らない恋愛未熟児」なのだそうだ、私は。
因みにその映画を夫にネタバレしたところ一言 "I'll pass（パスしとく）" と言われた。
成長に遅れの見える者がここにも。

でもこの「スパニッシュ・アパートメント」は、未熟児達を惑わせるシュール路線ではなかった。
最初からムダが感じられず小気味良いテンポ、しかし決して要所は外さず脚本がとても素敵。
フランス映画ならではのアンニュイな余韻もたっぷり。バルセロナの海や街も美しい。

全編フランス語とスペイン語なので、私は英語と日本語のサブタイトルで1度ずつ観たのだが、
どちらも翻訳がとても良い、軽快で下品でなく、心をぐっとつかむ台詞も多かった。

100％純正青春映画、でも日本の大学生活を知らない私には日本の学生さん達に「どう？
同じだと思わない？」とは言い辛い。ところが私の学生生活とは重なる部分が満載の
思い出色の湖、出血大サービスなノスタルジック・ストーリーだった。（これを読まれた後で
ご覧になられると、DJ Kennedyの大学時代は何とまぁ乱れたもの・・・とお思いになるかも）

まだまだ大人になり切れない学生達が、背伸びをしたり、そのままの自分をぶつけ合ったり、
そうして愛や友情を育んで、自己の確立、少年時代からの旅立ちを迎える。誰もが20代を
歩くうちに遭遇する国境のような場所がこの2時間余りに凝縮されている。
私はこの話が大好きだ。

青春真っ只中の若者達にはこれからいくらでも彼等を待つ刺激を期待させ、長い人生の道に
咲く青春の花々に今もなお清らかな水を注ぎながら愛で、あるいはまだまだ追い続けている
成熟した大人達にもきっと楽しめる作品。

「青春時代なんて人生の通り道」なんて仰らず。なかなか素敵な映画です。

（トレイラーは、こちら）
（あらすじは、こちら）

今夜は、この映画が上映された2002年にTVやラジオからよく流れていた曲を。
フランスのポップスは分からないので・・・。