DJ Kennedy/life is damn groovy

　　　




我が家にはホワイトデイというイベントがないので3月14日はそのままスルー。
街に溢れるホワイトデイのプレゼント商戦もスプリング・ギフトくらいに見て
何となく通り過ぎている。

正直心をぐっと掴まれるようなものには出会ったことがないともいえる。贈り物に
よっては相手に伝わりにくいものもある。相手が心から喜ぶ顔を思い描くより前に
自分のテイストやアイデンティティを押し付けてしまう場合とか。

今年のホワイトデイに勝負を掛けている男性には（もしかすると女性にも）、こんな
贈り物は如何だろうか。


わたくしごとで恐縮ですが、かつてシビレる朝を私にくれた男性の話。

バレンタインズ・デイの翌朝、遠くから聞こえるガチャガチャという音と共に
香ばしいコーヒーの香りが漂ってきて目が覚めた。

寝起きで大爆発した髪を直すでもなく音のする方へとベッドルームを出ると、
ダイニングテーブルが既にセットされていて、騒音の主は彼だった。

座ってて、そう促されてテーブルにつくと、コーヒーを手渡してくれて彼も座った。
20分も話していただろうか、コーヒーがなくなったところで私は着替えることにし、
その後で朝食を一緒に作ろうと言うと、「大丈夫、もうできてる頃だから」

身支度を整えてダイニングルームに戻ると、今度はテーブルにパンが置いてある
だけだった。ま、男の人だしこんなものか。

「俺なんてこんなもんだとか思ってるでしょ？」　読まれていた。

とにかく座れと言うが、バターくらい出そうよと冷蔵庫の扉に手を掛けると"No."
すべてがちっとも噛み合っていないという気分で仕方なしに席に着くと、彼が
自分で冷蔵庫に近付き、何故だかフリーザーを開けた。

「ここからは見ないでね」　から2,3分。「おまたせ」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

振り返ると、凍って白くなったカクテルグラスの上に、真っ白いソルベがのっている。
が、テーブルの上はこれと、新しく淹れ直してくれたコーヒーと、さっきのパンのみ。

すると彼は、鼻を膨らます。得意気になっている時は決まってこうなのだ。

「イタリィではさ、結婚した最初の朝、奥さんにレモンのソルベを作って、こうして
　ブレクファストに食べるんだって。一緒に食べようと思って昨日作ってみた。
　どうもイタリィでは、このソルベが二人に魔法を掛けるようだよ、イタリィではね」


あの念の押し方から、彼の話はおそらく真実ではない。私を唆す、ではなくて
落とす為の作り話かも知れなかった。けれど、彼の友人アランの家で昔から
朝食に、レモンのソルベをのせたパンを食べているのは本当のようだ。実際、
彼のアパートメントにも3メートルくらいの細いレモンの木があり、お料理に
よく使っているから、聞けばウソだとは思いにくい。

そして肝心のテイストだけれど、とても素晴らしかった。水気の多いソルベが
パンに合う訳がない、と思いきや、夏でも冬でも、食欲の無い朝なども意外に
気持ち良く頂くことができる。ソルベは氷がガリガリと残ったものではなくて、
スムースで口溶けのよいものを、軽いイタリアン・ブレッドと。バターを多く
使ったフレンチ・ブレッドとはあまり相性が良くないかも知れない。


さて、バレンタインズ・デイ当日に一生懸命慣れない手つきでソルベに空気を
含ませていた彼は、今私の横でふんぞり返って眠っている。結局彼の言った
「ソルベの魔法」とやらに引っ掛かって今があるのかと、ややだらしない寝顔を
見ながら思う。


レモン・ソルベの効果絶大。私が証明です。ホワイトデイまで2週間。
練習期間はまだ十分にあります。


＝アランのレモン・ソルベ＝（例によって材料のみ）

水、砂糖（私はオリゴ糖）、ハチミツ、すりおろしたレモンの皮（これは1個分）
レモン汁、スウィート・ベイジル（生）

1.　お水を温めて火から下ろしたら砂糖を加え、粒がなくなるまで混ぜる。
2.　お湯がぬるくなってきたところに、レモンの皮とレモン汁を加えて混ぜる。
3.　お湯が完全に冷めたら、渋みの出ない程度に細かく切ったベイジルを混ぜる。
4.　3.を冷凍庫に入れ、途中シャリシャリしてきたらフォークなどで混ぜ空気を含ませる。
5.　4.の行程を3回程続けてソルベがスムースになってきたら、食べるまで凍らせておく。

＊写真右は、レモン・ソルベにミント・リキュールを加えたもの。更にスッキリ。
＊我が家ではフォークで混ぜるのが億劫なので、フードプロセッサーで滑らかにします。


90sを彩った恋の歌。


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