DJ Kennedy/life is damn groovy

　


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-2話-



"FREEZE!"

私と目が合った人とは別の警官が大声を上げると、誰かがいきなり立ち上がって
そのひじが私の後頭部を直撃した。

「イテッ！」　「ゴメン！」

私と背中合わせに座っていたのがさっきの男だと何故気付かなかったか。
男はどうしてか一言私に謝り、店のドアを叩き開けて逃げ出した。警官が後を追うと、
店の客もスタッフも皆ピッツァを手にしたまま一緒になって外に出た。私も出た。

道路脇には馬車に乗った警官が既に2人待機しており、そのうちのひとりが
馬から犯人に向かって飛び掛かると、男はぺしゃっと道路に叩きつけられ見事御用、
ということになった。周囲は拍手の渦。

私も怖いのを忘れてすっかり興奮し、一緒になって手を叩いていたが、やがて意識が
寒さを思い出し、ブルブルと震えながら店に戻った。


店中がさっきの大捕り物を見物していた為に私のピッツァは「これから」と言われた。
コーヒーもホットチョコレイトもすっかり冷め切って、私は新しいものを頼んでピッツァを待った。


ホットチョコレイトが終わる頃、左の肩をとんとんと叩かれた。まさか。いや3度はなかろう。

"Excuse me, miss?" (すみません、お嬢さん）

振り向くや否や、一瞬息が止まった。私の様子を覗き込むその顔があまりに美しく凛々しく、
今までに見たことないくらい優しい口元なのだ。彼はさっき私に「静かに」と言った警官だった。
あの時と同じ人には見えなかった。

「ここに座ってもいい？誰か来る？」
「いいえひとりです」

彼は私の前に腰を下ろした。初恋の相手にでも再会してしまったかのような緊張。

ところが運命は無常にもこんなに素敵な人を使者にして皮肉な現実を突きつける。

彼が私を探してここに戻った理由は、信じられないものだった。犯人が立ち去る際
私に一瞬話し掛けていった為に、男と私が知り合いではないかという嫌疑を持たれて
いると言うのだ。私は本当に全く関係ないと言ったのだが、
「分かってるんだけど、一応事件だから。ごめんね」

ここで普段の私なら「そんなの納得できません」と一度は食い下がってもみるのだが、
生まれて初めて味わう一目惚れの弱点。受け答えをしながらも、彼が私に伝えることも
自分で主張したことも、イアフォンでもしているようにもごもごと聞こえ、ただはっきりと
しているのは、彼がとても魅力的だということだけだった。よりにもよって、こんな時に。

結局、交番に連れて行かれるはめになった、しかも、あれだけ待ったピッツァを諦めて。
因みにそれ以来、このピッツァリアには行かなかった。


　　　　　　　　　　　


ポリスの車に乗せられるなど初めての経験。街行く人の目が私を刺し、心地が悪かった。
別の警官が運転し、後ろの座席に私と、ブラウンと名乗った正義の王子様が座った。
初めて会った人に対してどうしてこんな気持ちになるのだろう。友達が口を揃えて言う
「心臓がゾウ並み」の私が何だか妙にそわそわし、周囲からの「犯人扱い」など
車に乗り込むとすっかり忘れて催眠状態にでも陥ったようだった。

「心配ないよ」とブラウンが言う。ほころぶ自分の顔を想像した途端耳が熱くなった。


リーアンのパーティまで1時間。私は間に合うのだろうか。


（あと1回だけつづく）



リーアンはパーティの準備に忙しい。






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