DJ Kennedy/life is damn groovy

　　



今日は雨だから家に居る、というわけではないが用事を済ませてから帰って来たので
昨日の小話でも。


昨日、我が家は上野へ桜を観に行った。東京の桜も見事なもので、わりに近場の
アークヒルズなどでもとても美しい桜を見ることができる。けれど友人から、上野の桜が
立派だという話を聞いて、午後から出掛けた。


とても寒かったが雨はなく、相当の人出が予想されるからランチにふっとレストラントを
使おうとしても思うようにいかないかも知れないよ、という彼女の話に、昨日はEaster
だったこともあって、家でポテイト・パンケーキを食べたのだ。


子供の頃は、Easterと言えば殊更に神聖な気持ちでその日を過ごした記憶が多いが、
大人になると、邪悪な誘惑に勝てなくなるのか、気がつけばテーブルに、夫の出してきた
Coronaが気持ち良さそうに冷えており、私もいい気になって「おっ、いいね」と言ってしまう。


日本ではビアをグラスで飲むことが多い（あるいはcan？）が、我が家は専らボトルで飲む。
Coronaにはライムがないと。私はキッチンに入りフリッジからライムを取り出す。


と、その時ダイニングルームで"Oh, 〇〇〇t!!"という夫の声が響いている。「どしたの？」




　　　　　　




我がセバスチャンは、Coronaを開けるオープナーにどうしたか手を引っ掛けて（本人談）
ボトルを倒し、お楽しみのCoronaをぶちまけていた。


大人なのに、と思ったら笑いが込み上げ、二人でしばし大笑いしていた。


ランチ時からCoronaを2本ずつ空けて、結局出掛けたのは午後もだいぶ遅くなった。
上野の桜は、それはそれは美しく、セバスチャンは10歩歩いては写真を撮っていた。
私はと言えば、真冬のような寒さにだんだんと耐えがたくなってきていた。そこに、
「熱燗」と書かれたブースが。すると夫が「飲んでみる？」外で、家でさえ日本酒など
滅多に飲むことはないのだが、この陽気とお花見気分で、なんと熱燗デビューである。


ほんのり甘い日本酒の、美味しいこと。「こういうのも悪くないね」「いや、かなり良い」
すっかりその気で、次に見つけたたこ焼きのブース。「あれもいっちゃう？」「いこういこう」


日本酒にたこ焼きは絶妙のバランスだ。けれど、あの竹串を使うのだけはこの二人には
なかなか難儀なもので、ほんわりやんわりとしたたこ焼きを私がひとつ取り上げると、
私が、ではない。たこ焼き自らバランスを崩し、スロウモーションを見るように徐々に
落下し、それを救おうとした時、セバスチャンだ。


彼だって私のたこ焼きを救おうしてくれたに疑いない。が、何故日本酒の手を宛がうか？
私の、竹串の右手と彼の日本酒の右手が大衝突、彼は見事に日本酒をぶちまけた。
しかも今度は、4月だと言うのにこの極寒の中、クロゼットにしまったばかりのムートンの
コートを着ていた私の袖元に。


コートも私の手もセバスチャンの手も、そしてたこ焼きのパックも日本酒まみれになり、
そして気付けば落下直前のたこ焼きはセバスチャンの救出により、日本酒のカップに
すっぽり落ち着いていた。


何故1日に2度もこんなことが？間抜けな夫婦は流れる人波の中で笑いを堪えきれず
取り残されるようにそこに立ち尽くしていつまでもゲラゲラと笑っていた。


セバスチャンは日本酒ですべすべになった右手で流れる涙をぬぐいながら、笑いながら、
何度も「ごめん、ごめん」と言っていた。思わぬおまけのついた我等のお花見であった。




　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　セバスチャン昨日のベスト・ショット



帰って来てから彼が撮った写真をPCに取り込むのを見ていたのだが、Coronaが
悪かったのかそれとも別の理由か、まともに写っている写真は1枚もなかった。
最近のカメラでここまで手ブレするというのも珍しくはないだろうか。


5年経っても戸惑うことの多い日本での生活でも、この桜の季節は格別に、
「ここで暮らせてよかったな」と思う。日本の桜は世界一だ。



雨の歌を、しっとりと。

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