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テーマ:Love Songs(54)
カテゴリ:Love Songs
雄大な大地の中をミニカーのような愛車、人生ゲームの車に乗せる小さなスティックにも 似た?人間二人はまっすぐに進む。 「ここで車が止まったらテキサスの時のようにはいかないわね」 「そういう不吉なこと言わないでくれる?」 いや、今回はGasが満タンで車に心配はなかった。テキサスの二の舞は踏むまい。 ここまで進んでくると、目に入る岩山の様子もだいぶ変わっていた。さっきまでは 砂を積み上げたような、岩肌のスムースなもの(例えば「Mt. Fuji」)が多かったが、 今見えるものは、表面に緑が多く生えている。 「雨が多いとか」 「木の神が宿っているとか」子供が童話の話でもするようだが、これは 一面の緑がそうさせているのだ。緑があると気持ちが落ち着く。自分達の日常にある緑、 セントラル・パークや郊外の家の森、それらここはまるで違う。何だかとても神聖だ。 会話にも潤いが生じてきた頃、にわかに辺りは曇り始め、いきなりサーッと雨が降る。 雨はほんの2,3分降って止んだ。驚いたのは、この短い時間で車内の外気温を示す 温度計の数字が5度も下がっていることだった。そして更に驚くのは、次の3分で あっという間に陽光が現れると、気温もまた5度上昇した。この連続だった。 20分程走っただろうか。 突然、それは現れた。 「セバスチャン、あれ、何だろ?」 「どれ?」 明らかにそれだけが、この広大な空間の中で異質な存在感を放っている。 まるで影が立ち尽くしているように見えるのだ。現実味を持たないあの物体に目が奪われ、 全身が固まった。「怖い」 「確かにちょっと、気味が悪いな」 夫もそう言った。とにかく、他の山とも岩とも相容れない 何かを持って何者をも寄せ付けないような不気味さでこちらに背を向けているように思えた。 「ちょっと近付いてみる?」 「それはどうかしら、何だかすごく怖いんだけど」 どこまでも平坦なこの道なのに、なかなか近くに辿り着けなかった。そしてようやく この距離まで来た時、夫が低い声で言う。 「ねぇ、これ見て」 心臓が、飛び出しそうだ。雨は降っていない。お日さまたっぷりの平地のど真ん中だ。 なのに、さっき通り雨が降った直後のように、気温計が今度は6℃下がっている、と 思えば次の瞬間そこから10℃も上がっている。こうしてだいたい20℃くらいを秒単位で 乱高下している。 「壊れた?」 「違うんじゃないの?」 「電波か何かかな」 壊れて動かない訳ではない。 「よし、とにかく日が暮れる前にFour Cornersに行ってみよう、それから考えよう」 黙って恐れをなしている私を見て彼は言い、その場を離れて4つの州が交わるポイント、 Four Corners Monumentへ向かうことにした。 私達がたった今出会ったあれは、一体なに?普通に考えればただの岩山に違いないのに、 少しもそうは思えない。とその時、セバスチャンと私の間で "パチン!" 火花の飛び散る ような大きな音と共に、これが? (つづく) とにかく怖くてアースでも聴くほかない。 (Click and enjoy the music videos!) にほんブログ村 Thank you so much for all your support! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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